【ジャカルタ/インドネシア 26日 AFP】インドネシアのファディラ・スパリ(Fadilah Supari)保健相は26日、世界保健機関(WHO)に対し、貧困に苦しむ国にも鳥インフルエンザ・ワクチンの開発を可能にさせる新規の規定づくりを要請した。

 インドネシアでは鳥インフルエンザによる世界最多の死者を出しているが、同国とWHOの間では、人間用ワクチンの開発をめぐり、インドネシア側がウイルスの試験用サンプル引き渡しを拒否し対立している。

 対立解消を目指す会議の席でスパリ保健相は、「現在のワクチン開発プロセスでは、ウイルスのサンプルを提出した国々と共同作業することなく、WHOとその関連機関だけが医薬品企業とウイルスを分け合っている。これは開発途上国にとって受け入れがたい」と怒りを表した。
 「(ワクチンの)価格面から、開発途上国には入手が不可能で、不利益の生じるシステムだ。システムを規定している法そのものを修正すべきだ」

■医薬品業界の「利潤追求」と非難

 インドネシアは2月、WHOに対する鳥インフルエンザのウイルス・サンプルの送付停止を発表。理由として、貧困に苦しむ国の予算では手の届かない高価なワクチン開発に、サンプルが使用されることへの懸念を挙げている。

 インドネシア政府では、「WHO関連の国際研究機関に寄付されたウイルス・サンプルは、民間の医薬品企業の利潤追求に活用されることから免れる」ことを法で保証する規定づくりを主張している。鳥インフルエンザのヒト用ワクチンの開発には、国際機関での研究は不可欠だ。

 スパリ保健相はまた、現在のウイルス収集とワクチン開発は50年前の手法のままで、「経済的に優位な国の医薬品業界にのみ利したものだ」と批判した。
 「世界各国、特にインドネシア周辺の国の代表らとも話したが、みなの考えを代表すると、現在の(ワクチン開発)システムによって生じている問題は、公共衛生における課題の中でも最優先事項の1つだ」

 写真はデンパサール(Denpasar)の市場で22日、アヒルを売る商人。19日、インドネシア政府は鳥インフルエンザにより21歳の男性が新たに死亡したことを発表。鳥インフルエンザによる同国内の死者は66人となった。(c)AFP/Sonny TUMBELAKA