【東京 21日 AFP】服用後の患者の異常行動が相次いでいるインフルエンザ治療薬「タミフル(Tamiflu)」の問題で、厚生労働省は21日未明に緊急記者会見を行い、従来の方針を転換し、10歳代の患者のタミフル使用を原則禁止するよう輸入販売元の中外製薬に指示した。

 指示では中外製薬に対し、添付文書の注意書きに未成年の患者の使用を原則差し控えるよう書き加えを命じたほか、タミフル服用後の患者の異常行動について中外から医療関係者に注意喚起を行うよう要請した。

■相次ぐ服用後の患者の異常行動
 
 厚労省は20日、10歳代の患者がタミフルを服用後、飛び降りたとの報告事例を新たに2件、明らかにした。しかし、タミフル服用と異常行動の因果関係について同省では依然不明としている、とNHKが伝えた。2件の事故報告を受け、中外製薬は緊急声明を発表し、「10歳から19歳の間の患者へのタミフル使用の原則差し控え」を医療関係者らに対して警告した。

 中外製薬によると、新たな事例2件とも、患者は自宅の2階から飛び降り、足を骨折した。うち片方の少年は夜中に突然起き出して2階へ向かって階段を駆け上がり、母親が制止する叫び声を振り切ってベランダから飛び降りた。

 前月にタミフルを服用した14歳の息子がマンションの11階から転落死した秦野竜子さんは、一貫して因果関係はないとしてきた政府に対し、「次の犠牲者が出るまで1歩どころか半歩も前進しない厚労省の姿勢は理解しがたい」と非難した。

■タミフルと異常行動の因果関係、厚労省は依然「未確認」

 タミフルの製造元であるスイスの大手製薬会社ロシュ(Roche)も20日、自社のウェブサイト上で日本と米国での新データを示し、「神経精神病学的症状とタミフル服用の因果性はまったくない」と発表し、改めてタミフルと異常行動の関連性を否定した。

 日本政府は、鳥インフルエンザの特効薬とされるタミフルの備蓄を積極的に進めており、全世界の出荷高の60%以上を買い占めている。しかし、インフルエンザと診断され、処方されたタミフルを服用した後に「飛び降り」などの異常行動で自殺した例がこれまでに多数報告されたことから、政府は厚労省内に研究班を発足、タミフルの副作用を調査中だという。

 写真は、ベトナム・ハノイ(Hanoi)の薬屋で売られているタミフル(2005年11月9日撮影)。(c)AFP/HOANG DINH Nam