【ワシントンD.C./米国 27日 AFP】マイク・マコネル(Michael McConnell)国家情報長官は27日、上院軍事委員会の公聴会で証言し、ロシアの民主化へ向けた動きは「後退」しており、対米的な「対抗意識と反感」を持っているとの憂慮を表明した。

■米高官はロシアに対する不信感をあらわに

 前週、正式就任したマコネル長官は、ロシアが大統領選挙を2008年に控え、国民と政治的プロセスの統制を図っていると指摘。さまざまな情報を検討した結果、「(ロシアの)民主化へ向けた動きは後退しているということがわかった。100%の確信ではないが、事実としてロシアが民主化とは反する方向に進みかねない証拠を、われわれは目撃している」と述べた。

 また、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)ロシア大統領が、「極端に保守的で、米国に非常に懐疑的な助言を重用している」と批判。「ロシアの自己顕示欲からくる米国への対抗心と反感が、米国の対露および旧ソ連諸国に対する政策実施を困難にしている」との見解を示した。

 米露間の緊張は、プーチン大統領が今月初頭にドイツで開かれた安全保障会議で、米国を「世界中のあらゆるところで内政干渉を行っている」と非難したことから、一気に高まった。

 さらに、ロバート・ゲーツ(Robert Gates)米国防長官も、冷戦再燃を懸念するコメントを発表している。

 一方で、ロシアのセルゲイ・ラブロフ(Sergei Lavrov)外相は、25日付けのワシントン・ポスト紙(Washington Post)に同調する意見を寄稿。「国際問題や世界経済の統合に向け、ロシアが積極的に役割を果たしていく用意ができた今、米露の意見の不一致を理由に、ロシアを敵国として扱うことは、有害あって一利なしだ」と警鐘を鳴らした。

■好調なロシア経済を背景に、ロシアは強気?

 また、マコネル長官は、ロシアが石油、天然ガスの備蓄強化や、エネルギー価格のつり上げを行っているのは、「自国の力を誇示するためだ」と主張。

 テロ対策や核拡散防止、エネルギー問題、中東の民主化促進といった幅広い分野にわたって、こうしたロシア側の態度は、各問題において「両国間の協調を阻害するものとなつている」とも述べた。

 また、「経済の活況と国内外の政治的成功を土台に、自信を深めたことが、防衛費の増加や欧米諸国と必ずしも調和しない外交政策の追及といった動きにつながっている。政府は2006年、政敵を抑え込み、経済などの戦略分野で国家の統制を強化した。大統領選挙が近づくにつれ、こうした傾向が深まる可能性は高い」とも語った。

 ロシアは2008年3月に大統領選を実施し、プーチン大統領は退任の予定となっている。

■元ロシア連邦保安局情報局員の毒殺事件も不信感の原因に

 また、米高官たちからは、ロシア政府の中央集権化、国内メディアの統制強化、エネルギー供給をめぐる周辺諸国への強攻策、そして、元ロシア連邦保安局(FSB)情報局員で、プーチン大統領に批判的だったアレクサンドル・リトビネンコ(Alexander Litvinenko)氏の毒殺事件などを根拠に、プーチン首相の専制路線強化に対する懸念が相次いでいる。

 マコネル長官もまた、「リトビネンコ氏の毒殺事件が証明するように、次々と顕在化する問題によって、欧米諸国とロシアの関係はより悪化する危険をはらんでいる」と報告書に記している。

 ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領は依然として、米露は「込み入った2国間関係」に関係なく協調することが可能との立場を崩していない。


 写真は11日、サウジアラビアのリヤド(Riyadh)で、アブドラ・ビン・アブドルアジズ(Abdullah bin Abdul-Aziz )国王と会談するプーチン大統領(左)。(c)AFP/ITAR-TASS/PRESIDENTIAL PRESS SERVICE