【ベイルート/レバノン 20日 AFP】地域社会間の緊張と政治的危機へ向かううねりが高まり、内戦さえ懸念されるレバノンで、旧ソ連製のカラシニコフ自動小銃の価格が約7倍に急騰している。

  AFPの取材の応じたある兵器ディーラーは、「需要が殺到している」という。1本100ドル(約1万2000円)程度だったカラシニコフ自動小銃が現在、700ドルから750ドル(約8万4000円から9万円)程度まで値上がりしている。「以前から銃を所持していた人々は絶対に手放さないか、大金でないと売ろうとしない。一方で万が一の事態に備えて、これまで銃を持っていなかった人々までが買いに走っている」。2ドル(約240円)で購入できた弾倉も、現在は約10倍に跳ね上がり20ドル(約2400円)する。

 昨年レバノン南部でイスラエル軍と戦闘を展開したシーア派武装組織ヒズボラ(Hezbollah)を除き、レバノン国内の民兵組織らは1975年から1990年の内戦後、すべての武器を引き渡し武装解除した。ヒズボラに対してはレバノン政府のみならず国連(UN)も武装解除を要求しているが、同組織はこれまで応じたことはない。

 首都ベイルート(Beirut)市街で前月、与野党の各支持派が衝突してから「誰もが銃を探している」と武器取引に近い商人も証言する。「反与党を掲げて運動を率いているヒズボラは、シリアとイランに支援を受けているが、地元の市場に対しては武器を転売していない」という。現在可能な銃の入手先は2通りに限定され、元々所持していた個人から個人への引渡しか、主にイラクからの密輸だという。

■銃の押収多発

 昨年12月、レバノン北部では親シリア派の政党の事務所数か所に対する捜索で、警察が武器を押収した。それらの武器は1980年代の「対イスラエル抵抗運動」の時代から残っていたものだと発表された。一方、商人によると、最近市場に出回っている銃は、大型トラックに隠したコンテナに入れ、シリア経由でイラクからもたらされている。「車のドアの内部に隠して持ち込む例もある。シリアの税関で発見されないよう、1回に密輸される銃の数は少ない」。

 シリア当局は2月4日、レバノンに銃を運ぼうとしていたイラクのトラックを取り押さえ、車両ごと没収した。15日にはヒズボラ宛ての銃を積載した大型トラックが、ベイルート東部で治安部隊に阻止された。

 昨年夏のイスラエル軍による34日間のレバノン進攻を停止させた国連安保理決議1701実施に関する昨年末の国連(UN)報告書では、「シリア・レバノン国境での武器取引に関する情報」について言及されている。

 イラクから銃を密輸するため仲買人を使う兵器ディーラーたちにとって、武器の取引天国とも言える「黄金境」として残るのは旧ユーゴスラビア地域だという。

 写真はベイルートで12日、銃の実射テストで装甲車のガラスの割れ具合を確認するレバノン人男性。(c)AFP/MARWAN NAAMANI