【フォートルイス/米国 8日 AFP】イラク従軍拒否を表明して訴追された米陸軍将校に対する軍法会議で、担当判事は7日、予備審理において弁護側と検察側による事実認定手続きに問題があったとして、審理の無効を宣言した。

 軍法会議は3月19日に再審理を予定している。

 同件で訴追されているのは日系3世アーレン・ワタダ(Ehren Watada)陸軍中尉(28)。2006年6月、所属部隊がイラクへ派遣された際、「イラク戦争は違法であり、道徳的にも誤っている」として参加を拒否したことから起訴され、軍法会議にかけられた。

 中尉の派遣拒否をめぐり、米陸軍側は「兵士には一連の命令を順守する義務があり、派遣される戦闘地を選ぶことができない」と主張。これに対しワタダ中尉は、米国憲法に基づき兵士には違法行為を拒否する権利があるとしている。

 審理が無効になったことについて、ワタダ中尉の弁護士団は「7日に判決が下され審理が終結することを期待していた。だが、審理中止となったことから、政府がこの訴訟を終了させるという結論に至った可能性が極めて高い。一事不再理の原則により、政府が再審を行うことができない可能性があるためだ」と述べた。

 ワタダ中尉は2003年に米陸軍に入隊し、2005年まで韓国に赴任。その後、イラク派遣の準備のためフォートルイス陸軍基地に移転した。その際、別の部隊への所属を変更してアフガニスタンへの従軍を希望したが、軍部はこれを却下。

 担当のジョン・ヘッド(John Head)判事は6日、イラク戦争の違法性について「今回の訴訟では判決を下す権限はない」として、軍法会議では取り上げないことを決定していた。

■ワタダ中尉支援の輪が世界各地に広がる

 ワタダ中尉の派遣拒否は、世界各地で注目を集め、支援の輪が広がっている。中尉を支援する有名人らも現れている。

 その1人である、ノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)を受賞した南アフリカのデズモンド・ツツ(Desmond Mpilo Tutu)氏は、中尉の支援者らが立ち上げたウェッブサイトに「あなたの勇気と道徳観は称賛に値する」との書き込みをしている。また、ショーン・ペン氏やスーザン・サランドン氏などの映画俳優らも、中尉への支持を表明している。

 写真は、米ワシントン州フォートルイス(Fort Lewis)陸軍基地で行われた軍法会議に臨むワタダ中尉。(c)AFP