【7月10日 AFP】ロシアのビタリー・チュルキン(Vitaly Churkin)国連大使は9日、シリアの反体制派が今年3月、シリア・アレッポ(Aleppo)に近いカーン・アルアッサル(Khan al-Assal)で化学兵器のサリンを使用した攻撃を行った証拠を国連(UN)の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長に提出したと発表した。報告書は80ページに及ぶという。

 チュルキン国連大使によると、ロシアの専門家が攻撃のあったカーン・アルアッサルを実際に訪れ、証拠を収集した。チュルキン氏は報道陣に対し、ロシアの調査によってシリア反体制派が3月19日、「Bashair 3」ミサイル1発を発射し、兵士16人を含む26人の死者を出した証拠が固まったと述べた。

「分析の結果は、カーン・アルアッサルで使用された武器が工業的に製造されたものではなかったこと、そしてその武器にはサリンが充填されていたことを明確に示している」(チュルキン氏)

 さらにチュルキン氏は、ロシアはこのミサイルが武装グループ「Bashair al-Nasr」によって製造されたものであるとの情報を得ていると付け加えた。同氏によるとこの武装グループは自由シリア軍(Free Syrian ArmyFSA)と関連があるという。

■米英仏はシリア政府が化学兵器使用と主張

 今回のロシアの行動は、開始からすでに2年2か月あまりが経過したシリア内戦における化学兵器の使用に関する国際的な論争に再び火を付ける可能性がある。

 米英仏の3か国は、シリア政府側が化学兵器を使用した証拠を国連の専門家に提出したとしている。国連外交筋によれば、これまでに米英両国は共同で、シリア政府軍が化学兵器を使用したとみられる攻撃10件についての情報を提出した。

 米国はチュルキン氏の発表を受け、シリアの反体制派が化学兵器を使用した証拠は得られていないとの西側諸国の見解を改めて主張した。これに対しチュルキン氏は、ロシアの報告書を西側各国にも送付すると述べ、自国の専門家は米英仏が提供した証拠には「感銘を受けていない」と述べた。

 なお国連は西側諸国から提出された資料について、証拠の出所が国連の専門家によって検証されていないことから、「決定的な証拠とはいえない」という立場をとっている。(c)AFP