【4月15日 AFP】2012年の世界全体の軍事支出は、前年比で1998年以降初めて減少に転じたことが、スウェーデンのシンクタンク、ストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research InstituteSIPRI)が15日に発表した報告書で明らかになった。西側諸国の予算削減が主な要因だという。その一方で、中国やロシアなどでは2012年の軍事費は増加した。

 SIPRI軍事費プロジェクトの責任者サム・ペルロフリーマン(Sam Perlo-Freeman)氏は、「世界の軍事支出の重心が西側先進諸国から新興国に移りつつあるのかもしれない」と指摘する。

 緊縮財政政策の導入やアフガニスタンからの撤退により欧米の軍事支出が縮小しているのに対し、その他の地域では経済成長とともに軍事費も拡大を続けているという。

 SIPRIの報告書によると、2012年の世界全体の軍事支出はインフレ調整後で前年比0.5%減の1兆7500億ドル(約173兆円)だった。だが台頭著しい中国の軍事支出は7.8%増、ロシアは16%増、かねてから緊張が続く中東地域は8.4%増だった。南シナ海(South China Sea)など領有権をめぐって緊張が高まる地域を抱えるアジア全体の軍事支出は3.3%増だった。

 一方、米国の軍事支出は6%減少し、その結果、世界全体の軍事支出に米国が占める割合はソ連崩壊以降初めて40%を下回った。SIPRIによるとこれは米国の戦費削減が主な要因で、2013年もこの傾向は続くとみられる。

 ペルロフリーマン氏によれば、各種の指標から、世界の軍事支出の減少は少なくとも北大西洋条約機構(NATO)軍のアフガニスタン撤退が完了する2014年まで続くとみられるという。その一方で新興国の軍事支出は増加を続けるとみられることから、2014年が過ぎれば世界の軍事支出は底入れするだろうとペルロフリーマン氏は述べた。(c)AFP