【4月17日 AFP】アフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)が首都カブール(Kabul)などを狙った同時多発攻撃は16日朝、発生から18時間を経て同国の治安部隊に制圧された。

 タリバンは「春の攻勢の始まり」と称し、カブールとその周辺の州で政府庁舎、外国の大使館や軍基地などを攻撃。民間人4人、治安部隊員11人、タリバン戦闘員36人の計51人が死亡した。タリバンの戦闘員のなかには民族衣装ブルカを着用し女性に扮装(ふんそう)して襲撃に加わった者もいたという。

 今回の襲撃は2001年の米軍の空爆以降、10年以上に及ぶ戦いのなかでカブールで起きたタリバンの攻撃としては最大規模のものとなった。

■「情報活動の失敗」 カルザイ大統領

 これを受け、アフガニスタンのハミド・カルザイ(Hamid Karzai)大統領は16日、「カブールや各州へのテロリスト侵入を許したのはわれわれ、とりわけ北大西洋条約機構(NATO)の情報活動の失敗だ。真剣に調査しなければならない」と述べた。
 
 北大西洋条約機構(NATO)は2014年末までにアフガニスタンに駐留する13万人の兵員を引き上げ、治安権限をアフガニスタン側に移譲する計画だが、今回のタリバン攻撃によって同国の心もとない治安の現状に不安が高まっている。

 15日から16日にかけてのタリバン同時多発攻撃に対する作戦ではアフガニスタン治安部隊が指揮をとった。だが、NATO報道官によると、アフガニスタン側からの要請を受けてNATOの航空機も上空から支援を行ったという。

 アフガニスタンのビスメッラ・モハマディ(Bismillah Mohammadi)内相によると、東部ジャララバード(Jalalabad)でタリバン戦闘員1人が身柄を拘束された。

■「タリバンの能力示す」 西側外交官

 アフガニスタンに駐留する国際治安支援部隊(ISAF)のジョン・アレン(John Allen)司令官は速やかに声明を出し、「カブール攻撃に際し、アフガニスタンの治安部隊は迅速かつ統率された対応をとり、市民を守って武装勢力をおおむね封じ込めることに成功した」とアフガニスタン治安部隊を称賛した。

 だが、多数のタリバン戦闘員がカブール中心部に設置された「鋼鉄の輪」と呼ばれる検問所群をくぐり抜けて重要施設を襲撃したという事実は、治安体制に疑問を投げかけている。

 治安分野の専門知識を持つある西側外交官は、匿名を条件に、「NATOや米国が(アフガニスタンの治安に対して)抱いている楽観的な見方を、私は全く共有できない」とAFPに語った。この外交官は、状況は「以前より進歩していることは事実だ」としたうえで、「これほどの同時多発攻撃を実行できたということは、いつでもどこでも思うがままに攻撃する能力がタリバンにあるということを示している」と指摘した。

 今回の同時多発攻撃で、タリバンは米国、英国、ドイツ、日本の大使館が集まる地区を襲撃。さらにタリバン戦闘員らは議会議事堂への侵入も試み、屋上に上がった議員や警備員たちとの間で銃撃戦になった。(c)AFP

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