【8月29日 AFP】リビアの首都トリポリ(Tripoli)を制圧した反体制派勢力は28日までに、ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)政権に拘束されていた政治犯ら1万人以上を解放したと発表した。だが、依然として5万人近くの行方が分からないという。

 反体制派は東部ベンガジ(Benghazi)で記者会見を開き、「これまでの数か月間に拘束された人数は5万7000~6万人に上っている。1万~1万1000人は解放したが、残る人びとはどこにいるのだろうか」と、深い懸念を表明。「トリポリでは、拘束施設やアブスリム(Abu Slim)刑務所の周辺で、埋められた大量の遺体が発見されつつある」と述べた。

■カダフィ派精鋭部隊の基地に多数の黒こげ遺体

 トリポリ南部郊外のサラヘディン(Salaheddin)では、反体制派が制圧したカダフィ大佐派の精鋭部隊の基地に隣接して作られた仮設の拘束施設内で、骨まで黒こげになった53遺体が地元住民らによって発見された。

 現場に入ったAFP記者も、灰の中に少なくとも50人分の頭がい骨を確認した。施設の壁は火災で真っ黒に焼け焦げ、爆弾の破片による穴がいくつも残っていた。

 同施設に拘束されていたという男性によると、広さ20平方メートルに満たない施設内には120人近くが押し込められていたという。この男性は、施設内が過密になったため隣の建物に移送され、命拾いしたと語った。「人びとは重なり合うように押し込まれていた。(カダフィ軍が)ドアを封鎖して逃走したのを聞いた。彼らは手りゅう弾を投げ入れて爆破したんだ」

 施設のすぐそばには巨大な穴があり、住民らは付近に最大80人ほどの遺体が埋められているのではなないかと懸念している。

■最後の拠点シルト、包囲網狭まる

 一方、反体制派勢力は28日、トリポリの東360キロにあるカダフィ大佐の出身地シルト(Sirte)を東西両側から包囲しつつある。カダフィ氏の行方はわかっていないが、支持者とともにシルトに立てこもっているとの憶測が広がっている。

 反体制派軍司令官によると、西から迫る部隊はシルトから30キロ地点まで達した。また東側では、シルトの東100キロにあるビンジャワド(Bin Jawad)を、4日間にわたる激戦の末に反体制派が制圧。ズワーラ(Zuwarah)の南西部でも、カダフィ派の奇襲を受けて激しい戦闘が起きているという。(c)AFP