【7月8日 AFP】(写真追加)暴徒化した群衆のスローガンを叫ぶ声が聞こえ、イスラム教徒のウイグル人男性3人が必死で走り出した。

 数十人の漢民族が「捕らえろ!殴れ!殴れ!殴れ!」と叫び声を上げ、3人のウイグル人を追いかけ始めた。

 2人は無事逃げ延びることができた。

 しかし、1人は不運にも捕まった。30秒間もの恐怖の時間、ウイグル人の男性は地面に横たわり、6人の男に繰り返し蹴りつけられた。数十人の漢民族らがその様子を眺め、蹴りつけている男たちをはやし立てる叫び声を上げた。パーマをかけた30代の女性が横たわる男性を蹴りつけ、まもなく警官が暴行を制止に入った。

 警官は、群衆を遠ざけただけで、襲撃者らを拘束する様子はなかった。ウイグル人の男性は顔が血まみれになり、苦悶の表情で横たわっていた。

 ウイグル人を襲撃した6人の男たちは、襲撃の直前に、5日に起きた暴動で死亡したとされる漢民族の遺体写真を掲載した政府系新聞を眺めていた。

 そして、写真を見つめながら、男の1人が「ウイグル人を殺せ」と言った。

■漢民族とウイグル人の亀裂

 漢民族は中国で最も多い民族で、政府の統計によると、13億の人口の91.5%を占めている。

 しかし、広大な砂漠が広がり、中央アジアとの境界に山脈が連なる新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)では、約800万人のウイグル人が人口の約半数を占めている。

 ウイグル人たちは、中国共産党の支配下で過去60年間にわたって差別と抑圧を受けていたとこれまで繰り返し主張してきた。しかし、中国政府はこれを否定している。

 混乱の中、ウイグル人と漢民族の双方が、ウルムチ(Urumqi)の近い将来に対する不安を表明している。

 中国人男性Chen Xipingさん(32)は、「解決が非常に難しい問題だ。こんな状態になったのはウイグル人のせいだ」と語る。「ウルムチが中国のバグダッド(Baghdad)と化した以上、このような治安対策が必要なのだ」と述べた。

 また、「アリ」と名乗るウイグル人男性は、「皆憎悪をむき出しにしている。未来は暗い」と述べ、暴動は不可避だったと語った。(c)AFP/Dan Martin