【6月14日 AFP】米政府は今週、キューバ・グアンタナモ(Guantanamo)湾にあるグアンタナモ米海軍基地内のテロリスト容疑者収容施設の閉鎖を目指し、一部収容者を釈放し、サウジアラビア国籍の3人を本国へ送還した。

 論争の的となった同収容所の閉鎖という、政治的に細心の注意を要する計画に向けて、バラク・オバマ米大統領(Barack Obama)米大統領は、9人の被収容者をチャドやイラク、大西洋上の英領バミューダ、太平洋上のパラオなどへ移送した。

 容疑者らの処遇見直しに当たる米政府委員会のマシュー・オルセン(Matthew Olsen)委員長によると、1週間に移送された被収容者の数としては「過去1年間で最多」だ。「この重要課題において米政府と緊密に連携し、グアンタナモ閉鎖を支援したいという各国政府の協力によって」実現可能になったという。

■いまだ残る200人超、見つからない受け入れ国

 グアンタナモ収容所は、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前米大統領が掲げた「テロとの戦い」の一環として、テロリスト容疑者を収容するため2002年に設置された。以降、各国へ移送され直した元被収容者は30か国以上、540人以上に上るが、現在も約230人が残っている。しかし、オバマ大統領は2010年1月末までに同収容施設の閉鎖を約束している。

 元収容者の多くにはすでに完全な釈放許可が出ているが、受け入れ国が見つからず、米政府は苦労している。一方、米議会は元収容者を国内に居住させることに抵抗を示している。

 そうしたなか、太平洋の島国パラオは10日、ウイグル国籍の元被収容者17人の受け入れに応じた。また米政府は即翌11日、キューバのグアンタナモから同じくウイグル人4人を英領バミューダに移送した。同日さらに、チャドとサウジアラビアの二重国籍をもつ元被収容者をチャドに、イラク国籍の人物をイラクに送還した。

 また、米経済紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)は同週、イエメン国籍の100人超の受け入れについて、米当局がサウジアラビア政府と交渉中だ報じた。

 こうした動きから、オバマ政権が集中的にグアンタナモ被収容者の外国送還を開始したと捉えられる。また米政府がドイツ、カナダ、オーストラリアなどにも受け入れを打診していることが明らかになった。

 一方で、本国送還すれば拷問にあう恐れのある被収容者や、訴追される可能性のある中国の新疆ウイグル(Xinjiang Uighur)自治区のイスラム教徒は送還されずにいる。うちタンザニア国籍の人物1人が初の例として今週、グアンタナモから米本土に移送され、通常の裁判所で審理を受けたが、こうした例がほかにも続くかどうかは不明だ。

■欧州にも協力求む米政府、自国内での対策は言及せず

 複数の欧州外交官らによると、欧州連合(EU)と米政府は11日、欧州への元被収容者受け入れ条件について合意したとの情報があるが、米国側に自国内に一部を留めることを条件にさせるには至らず、「グアンタナモ収容施設閉鎖と、元被収容者の居住先を探す一義的な責任は米政府にある」ことを確認するだけで終わったという。

 米国国立公文書館で5月に行った演説でオバマ大統領は、被収容者のうち最重要危険人物については、裁判なしに無期限で拘束を継続する法的枠組みを作る可能性を初めて認めた。

 米民主党のラス・ファインゴールド(Russ Feingold)上院議員は、オバマ大統領の宣言に対し、テロリスト容疑者の一部を無期限に拘束することを、「米国の司法システムのなかで、そうしたことを容認事項にしてしまう危険がある」と警告を発している。(c)AFP/Alex Ogle