【5月21日 AFP】スリランカの反政府武装勢力「タミル・イーラム解放のトラ(Liberation Tigers of Tamil EelamLTTE)」の最高指導者ベルピライ・プラバカラン(Velupillai Prabhakaran)議長と側近2人が18日に銃撃を受け死亡した経緯について、側近らが政府軍への降伏を模索していたために配下のLTTE戦闘員に殺害されたという説と、スリランカ軍に処刑されたという、まったく異なる2説が浮上している。

■死亡直前に降伏模索か

 スリランカ国防相が、LTTEの全指導者の死亡と内戦終結を宣言する数時間前、LTTEの政治部門の指導者B.ナデサン(B. Nadesa)氏とLTTE和平事務局のS.プリディーバン(S. Pulideevan)事務局長は、降伏を模索し動いていた。

 2人は17日夜、現地で活動していた赤十字国際委員会(International Committee of the Red CrossICRC)と、スリランカ内戦の仲介を担ったことのあるノルウェー政府に接触し、政府軍へのメッセージ伝達を依頼してきたと、外交関係者や援助関係者が証言している。

■赤十字国際委員会にメッセージ託す

 ICRCでは、LTTEが17日に敗北宣言を発表した後に、LTTEの2人とノルウェー政府の双方から接触があったことを認めている。ICRCの広報担当者は、中立的な立場を貫く仲介者としてICRCから政府軍にメッセージは伝えたが、「何が起こったのかは分からない。LTTEとは最終段階で連絡が途絶えてしまった」と振り返る。

 このやりとりの詳細を知る外交官は、プリディーバン事務局長からの最後のメッセージは、LTTE側が家族とともに投降するという内容だったという。その次の報は18日の朝で、すでにLTTE幹部が死亡したというものだった。

 この外交官は匿名を条件に「降伏しようとして味方に射殺された可能性もあるし、投降が間に合わず、政府軍が進入したのかもしれない。軍に処刑された可能性もある。スリランカではどちらも捕虜はとらない」と語った。LTTEの戦闘員は生きたまま捕虜になることを嫌い、青酸入りのカプセルを首から下げていることはよく知られている。また、自爆の技に長けたLTTEの戦闘員たちに対し、政府軍は同じく容赦しない。

■政府筋はLTTEの内部分裂を示唆

 また別の外交筋は、自らを戦闘員よりも政治家と位置づけていたLTTEの側近2人が、生き残りをかけて必死な様子だったと証言した。

 一方、政府側のパリサ・コホナ(Palitha Kohona)外務次官は、2人は味方に殺害されたと主張した。コホナ次官は「第3者(ICRC)から、2人が降伏を望んでいることを知らされたので、武器を持たずに白旗をあげてゆっくり寄ってくるという一般的な方法で投降するよう指示したが、次に聞いたのは彼らが背後から何者かに射殺されたという事実だった。彼らはLTTEに殺されたのだ」と語った。

■LTTEは政府の陰謀と反論

 当のLTTE側は、LTTEの組織構造壊滅を狙った政府による、非武装のLTTE幹部2人に対する「よく練られた虐殺計画」だったと激しく非難している。

 LTTEの国際関係部門の指導者セルバラサ・パスマナサン(Selvarasa Pathmanathan)氏は18日の声明で、秩序ある内戦終結について協議するために、複数の他国政府がスリランカ軍との交渉の場を設定してくれたと明かした。その上で、LTTEの幹部2人は「戦闘圏内で武器を持たずに白旗をあげ、スリランカ軍第58師団と接触するよう指示を受けたが、それに従った際に2人そろって撃たれ殺された」と経過を説明した。

 プラバカラン議長らLTTE最後の瞬間の正確な状況は、不明のままだ。(c)AFP/Stefan Smith