【5月3日 AFP】スリランカの反政府勢力「タミル・イーラム解放のトラ(Liberation Tigers of Tamil EelamLTTE)」系のウェブサイト「タミルネット(Tamilnet.com)」は2日、政府軍がLTTEが立てこもる同国北東部沿岸地域に唯一残った医療施設を砲撃し、少なくとも64人が死亡、84人が負傷したと伝えた。

 タミルネットによると、政府軍は2日午前9時と午前10時30分(日本時間同日午後12時30分と午後2時)に、北東部ムライティブ(Mullaittivu)地区の仮設病院に一発ずつ砲弾を撃ち込んだ。その3日前にこの仮設病院の正確な位置が、赤十字国際委員会(International Committee of the Red CrossICRC)を通じて政府軍に伝えられていたとしている。

 一方、政府軍のウダヤ・ナナヤッカラ(Udaya Nanayakkara)報道官は「政府軍は一切砲撃していないが、非戦闘地域で大きな爆発音が聞こえた。LTTEが誤射事故を起こしたのかもしれない」と述べた。

 政府側とLTTE側の主張は異なるが、北東部に中立の立場の目撃者がいないためどちらが正しいかは不明だ。国連(UN)は同地域への人道支援チームの立ち入りを求めたが、スリランカ政府はこれを拒否している。

■政府、衛星写真に攻撃疑惑を否定

 また政府軍は、国連人工衛星機関(UNOSAT)のウェブサイトに掲載された衛星写真から、自ら非戦闘地帯に指定した地域を砲撃したとされる疑惑がもたれている。この衛星写真には2月15日から4月19日までの間に非戦闘地域にできた大きなクレーターが写っていた。しかし国防省は2日、政府軍が4月、「地上で調査しない限り科学的な妥当性がない」としてこの疑惑を否定した。

■日本政府代表、民間人の保護を要請

 国連はLTTEが最後の拠点を構えて立てこもる北東部沿岸地域に約5万人の住民が取り残されていると推定しているが、スリランカ政府は約2万人程度にすぎないと主張している。

 2日にはスリランカ訪問中の元国連事務次長、明石康(Yasushi Akashi)日本政府代表がマヒンダ・ラジャパクサ(Mahinda Rajapakse)大統領と会談した。明石代表はLTTEに、民間人の安全な地域への移動を認めて欲しいと述べるとともに、スリランカ政府には民間人の保護と、政府が運営して約10万人のタミル人を収容している避難民キャンプの環境改善を求めた。(c)AFP