【11月12日 AFP】イラクの首都バグダッド(Baghdad)周辺で、米国の外交官らの護衛として雇用されていた警備員が、イラク人のタクシー運転手を射殺する事件が起こっていたことが12日、明らかになった。イラクへの民間軍事会社の派遣をめぐる議論に、新たな波紋が広がるとみられる。

 事件はバグダッド北郊のUtafiyaで10日に発生した。事件の様子を目撃していた警察官によると、発砲したのは米国の民間軍事企業ダインコープ・インターナショナル(DynCorp International)から派遣された警備要員で、挑発行為などはなく、いわれのない発砲だったという。

 イラク内務省の作戦指揮を執るAbdul Karim Khalaf少将も発砲事件があったことを認め、「Utafiyaで10日の午前11時30分(日本時間午後5時30分)頃、軍事会社要員により1人が殺害された。捜査が始まっている」とAFPの取材に答えた。

 在イラク米国大使館は、事件の発生については把握していたが、死者が発生した事実は確認していなかったと回答した。同Mirembe Nantongo報道官は、10日に民間車両1台とダインコープの警備チームが関与する保安事件が発生したと認識していたことは認めた。

 しかし、ダインコープからは、民間車両が車列に近づいたため、停止させるために致命的でない方法で威嚇したと報告されていたという。さらに「運転者が車列に近づき続けたため、警備チームの1人が発砲したが、誰が負傷または亡くなったかについては情報が錯綜している」と説明した。

 目撃した警官は、タクシー運転手は明らかに車列が通過し終わったと思った様子で、道路脇にいったん停止していた後に再度動き出したところだったという。すると、米側の車列最後尾の車両に乗っていた警備員らが警告なしで3発を発射、2発はタクシーのエンジン部に当たり、1発が運転手の胸部に命中して致命傷となったと、この警官は証言している。

 イラク政府は前月末、同国内で活動する民間軍事会社に認められていた訴追免責を廃止する法案の議会提出を閣議決定した。9月16日に発生した同じく米企業ブラックウォーター(Blackwater)によるイラク民間人17人の殺害など、民間軍事会社が関与する銃撃事件が後を絶たない中、同種の企業に対する訴追免責について見直しを求める議論が巻き起こっていた。(c)AFP