【10月11日 AFP】2006ツール・ド・フランス(2006 Tour de France)の総合優勝のタイトルをドーピング疑惑により剥奪された米国のフロイド・ランディス(Floyd Landis)が10日、公聴会の評決の取り消しを求めスポーツ仲裁裁判所(Court of Arbitration for Sport:CAS)に上訴したことを明らかにした。

 スイスのローザンヌ(Lausanne)にあるCASに評決の取り消しを求めて上訴したランディスは、9月20日に下された公聴会の評決で2006ツール・ド・フランスにて人工テストステロン(testosterone)を使用したことが確定し、総合優勝タイトル剥奪と2年間の出場停止の処分が下されていた。

 米国反ドーピング機関(USADA:United States Anti-Doping Agency)とランディスの弁護士は、5月に9日間に渡り行われた公聴会で3人の陪審員に対し、大会期間中のドーピング検査で陽性反応が検出されたランディスの無実を証言していた。

 ランディスは莫大な裁判費用を募るために設立した「Floyd Fairness Fund」のウェブサイト上で「私に対する疑惑は単純に間違いであり、私のエネルギーと家族や友人、支援者などを含むあらゆる財産を危機に晒している。堂々と戦いツール・ド・フランスを勝ち取ったことを証明するために、私が正しいと信じて戦い続けたい」と発表している。

 さらにランディスは「私の最終的な結果がどうであれ、スポーツ選手が平等な舞台で戦い、スポーツがもたらす喜びやインスピレーションを取り戻したいのであれば、現行のシステムは変えなければならない」とし、反ドーピングシステムが選手に対し不当に働いており、変化が必要であるという当初からの主張を繰り返している。

 また、ギブソン・ダン・クラッチャー(Gibson、 Dunn & Crutcher)法律事務所によって発表された声明でランディスは「この機会にドーピング疑惑に対する身の潔白を改めて主張したい。陪審員が(ランディスの検査を行った)フランスの研究所のミスが陽性反応という結果を招いたという事実を公正に扱ってくれることを望んでいる」と発表し、既に上訴書類を提出したことを明らかにしている。

 ランディスの弁護団の主席弁護士は、公聴会で提出した証拠はランディスの潔白を証明するものに十分に値すると信じており「ランディスがCASに上訴することをお伝えすることができて嬉しく思う。我々はフランスの研究所が技術的に欠陥を抱え、誤って陽性反応の検査結果が出たと言う証拠を常に信じてきた。今回の上訴は公正であるべき公聴会でこれらのミスを認識させ、疑惑に対し事実と法律を適用するためのものだ。これが終わればフロイドは彼の望む正義を手にすることができるだろう」と語り、加えて上訴書類は弁護団に加わるスイスの弁護士と合同で提出したことを明らかにしている。

 一方、国際自転車競技連合(International Cycling Union:UCI)はCASの判断を待つ姿勢は見せず、9月に2006ツール・ド・フランスのタイトルをランディスと57秒差の総合2位に入ったケースデパーニュ(Caisse d’Epargne)のオスカル・ペレイロ(Oscar Pereiro、スペイン)に与えると発表し、15日にはマドリードで総合優勝の証であるマイヨ・ジョーヌがペレイロに授与されることとなっている。

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