【7月16日 AFP】(一部更新)エジプトの首都カイロ(Cairo)や近郊都市で15日夜から16日未明にかけて、ムハンマド・モルシ(Mohamed Morsi)前大統領の復帰を求めるデモ隊と治安部隊との激しい衝突があり、保健当局によると、7人が死亡、261人が負傷した。カイロでの衝突は、共和国防衛隊(Republican Guard)本部前でモルシ氏支持派が銃撃され、数十人が死亡した8日以降では初めて。

 緊急対応当局のモハメド・スルタン(Mohammed Sultan)主任はAFPの取材に、タハリール広場(Tahrir Square)そばのラムセス(Ramses)地区中部の衝突で2人が死亡し、カイロと隣接するギザ(Giza)で起きた衝突で5人が死亡したと語った。治安部隊からも負傷者が出ているという。

 半国営の中東通信(MENA)も、保健省高官の話として、同じ死傷者の数を伝えている。また、同高官によると、負傷者のうち124人は今も病院で治療を受けている。

 カイロ中心部の10月6日橋(October 6 Bridge)では、モルシ派のデモ隊が橋を占拠し、治安部隊が催涙弾を発射してデモ隊と衝突。ラマダン中の日没後の食事イフタールを終えた人々が合流してデモ隊は数千人規模に膨れ上がり、隣接するラムセス広場などを含め市内各地で衝突が未明まで続いた。

 衝突の数時間前には、15日にカイロ入りしたウィリアム・バーンズ(William Burns)米国務副長官が、エジプト内で対立する各勢力に向けて暴力行為を停止して対話に参加するよう呼びかけたばかりだった。

■米国務副長官は暫定政権幹部と会談

 事実上のクーデターで今月3日にモルシ前大統領が解任された後、米政府高官として初めてエジプトを訪れたバーンズ氏は、モルシ氏排除を指揮したアブデルファタフ・サイード・シシ(Abdel Fattah Said al-Sisi)軍最高評議会議長兼国防相やアドリ・マンスール(Adly Mansour)暫定大統領、ハゼム・ビブラウイ(Hazem al-Beblawi)暫定首相らと会談した後、「暴力や扇動の停止、報復の防止、そして全勢力・全政党間の真剣で実のある協議開始が最優先だ」と述べた。

 エジプトの新指導者らは、暫定政権の組閣と総選挙に向けて民政移行プロセスを進めているが、モルシ氏の出身母体であるイスラム主義組織「ムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)」は断固としてモルシ氏の大統領復帰を求めている。

 米国務省によればムスリム同胞団とバーンズ副長官との会談は行われなかった。モルシ氏の退任につながった抗議行動を組織した市民団体「Tamarod(反乱)」のまとめ役の1人はAFPの取材に、バーンズ国務副長官との会談を打診されたが「米国は初めからエジプト国民の側に立っていなかった」という理由で断ったと語った。(c)AFP