【4月26日 AFP】セルビアのトミスラフ・ニコリッチ(Tomislav Nikolic)大統領は25日、ボスニア国営テレビのインタビューで、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中の1995年7月に約8000人のイスラム教徒が殺害されたスレブレニツァ(Srebrenica)虐殺事件について、私的な謝罪の言葉を初めて口にした。だが一方で、事件を「大量虐殺」と呼ぶことは避けた。

「スレブレニツァで行われた犯罪行為について、私はひざまずいてセルビアへの許しを請う」。同大統領は、第2次世界大戦以後に欧州で行われた最も残虐な大量虐殺について、こう語った。「我々の国家や国民の名の下に、個人が犯した犯罪行為について謝罪します」

 このインタビューの模様は後日、ボスニア国営テレビで放送される予定だが、一部はすでにユーチューブ(You Tube)で閲覧できる。(http://www.youtube.com/watch?v=9c-iF9Li8tY)

 イスラム教徒の男性と少年、約8000人がボスニア系セルビア部隊に殺害された同事件は、2件の国際裁判で「虐殺」と認定されているが、昨年5月の大統領選で当選した同大統領は、「スレブレニツァで大量虐殺はなかった」と明言し、波紋が広がっていた。

 今回の同大統領の謝罪を受けて、被害者家族の支援団体「スレブレニツァの母(Mothers of Srebrenica)」の代表で、自身もスレブレニツァ虐殺事件で夫と息子を失ったムニラ・スバシッチ(Munira Subasic)さんはAFPの取材に応じ、大統領には誠意が感じられないと話した。

「誰かにひざまずいて詫びて欲しいとは思いません。セルビアの大統領と国家から、『大量虐殺』という言葉を聞きたいだけなのです。その言葉を聞いたときに初めて、誠意ある態度だと信じることができるでしょう。セルビアには国際裁判の判決を受け入れて欲しいです」

(c)AFP