【1月30日 AFP】ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)米国務長官は29日、「最後の別れ」を告げるため、バーチャルな世界一周の旅に出た。

 米国務省が「グローバル・タウンタビュー」(「タウンミーティング(市民との対話集会)」とインタビューを合わせた造語)と呼んだ今回の試みの中で、クリントン長官は衛星回線とインターネットを使用して世界の主要テレビ局の番組司会者やインターネットユーザーからの質問に答えた。約4年間にわたって務めた国務長官の職を2月1日に退くクリントン氏にとっては、最後の公開イベントの一つとなった。

 国務長官としておよそ100万マイル(約160万キロメートル)を旅し、世界の指導者らと約1700 回の会議をこなし、約570食の機内食に耐えたクリントン長官だが、約1時間にわたって首都ワシントン(Washington D.C.)にあるニュースとジャーナリズムの博物館「ニュージアム(Newseum)」で行われたインタビューの間は席を立つことはなかった。

 レバノンの首都ベイルート(Beirut)から東京、英ロンドン(London)、インド・ニューデリー(New Delhi)、コロンビアの首都ボゴタ(Bogota)、ナイジェリア最大の都市ラゴス(Lagos)にまで至る世界各地から質問を受けた長官は、差し迫ったさまざまな問題について考えを述べた。

■孤立を続ける北朝鮮に「遺憾」

 北朝鮮の新たな指導者、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)第1書記が就任して以降、北朝鮮が国際社会からの孤立を解消する方向に動いていないことについては「遺憾だ」と述べ、「私たちは皆、若い新たな指導者に、これまでとは違う何かを期待した。北朝鮮のエリート層ではなく、すべての国民の生活の向上に力を注いでくれることを期待したのだ。だが、第1書記は挑発的な言動ばかりに終始している」と語った。

 さらに長官は、「北朝鮮問題はわれわれ全ての国にとっての脅威」だとして、就任以来この4年間、日本、中国、韓国の外相と北朝鮮問題について「長時間にわたる協議」を行ってきたと強調した。

■今後の去就にも注目

 一方、米国の元ファーストレディーであり、ニューヨーク(New York)州選出の上院議員だったこともあるクリントン氏が国務長官退任後に何をするかについても多くの質問が寄せられた。新たな回想録を執筆中であることは間違いないとみられているが、長官はこのほか、今後も女性の権利のために活動していくことを約束した。

 長官の夫であるビル・クリントン(Bill Clinton)元米大統領が創設した財団「クリントン・グローバル・イニシアチブ(Clinton Global Initiative)」や、娘のチェルシー(Chelsea)さんとともに活動する可能性もある。「今後、いかに協力していくかについて話し合うつもりだ」という。

 続いて米テレビネットワーク各社とのインタビューが立て続けに行われた。米NBC Newsのインタビューで大統領選への出馬の可能性について聞かれたクリントン長官は、脳振とうを起こしたり、血栓が見つかるなどした最近の健康状態について触れ、出馬を検討する場合、それが今後の決断に「影響を及ぼすことは全くない」と述べた。(c)AFP