【1月25日 AFP】スペイン主要紙パイス(El Pais)は24日、再発したがんの治療のためキューバの病院に入院中のベネズエラのウゴ・チャベス(Hugo Chavez)大統領だとする写真を一面に掲載したが、その後、偽物だったとして謝罪した。

 問題の写真は、病院のベッドの上で医療用チューブを口に挿入された状態で横たわる男性患者を写したもの。チャベス大統領の写真だとして電子版に掲載されたが、30分後に削除され、既に販売店に配達されていた掲載紙も回収された。

 中道左派のパイス紙はスペインで売り上げトップを誇る全国紙で、スペイン語圏にも大きな影響力を持つ。

 同紙は24日深夜、電子版に「パイスが掲載すべきでなかった写真」と題した謝罪記事を掲載。問題の写真はスペインの通信社Gtres Onlineからチャベス大統領の写真だとして入手したものだと述べた。写真の入手経路について同通信社は、キューバの病院に姉が看護師として勤めているというスペイン在住の女性から提供されたもので、7日前に撮影されたと説明するとともに、この看護師はその後チャベス大統領の担当から外れたが、こうした経緯は記事にしないようパイス側に求めたという。

 パイスによると、この通信社も写真の提供元にだまされたようだという。

 医療用チューブにつながれた患者の写真を掲載するか否かについてはパイス紙編集部でも検討したが、チャベス大統領の健康状態への関心の高さや、ベネズエラの国政の今後をめぐるニュース性から掲載を決めたという。同紙はキューバ・ハバナ(Havana)の特派員を通じて写真の信ぴょう性を確認することも検討したが、特派員はキューバ当局の監視下にあり写真の確認を依頼すれば身に危険が及ぶ恐れがあったことから、断念したという。

 紙面に掲載された写真には、撮影状況や場所、日付など事実関係は確認できていない旨が記されていた。

 ベネズエラ政府は、パイス紙を相手取った訴訟を示唆している。ベネズエラ情報省の声明によると、問題の写真は2008年8月6日に動画共有サイトのユーチューブ(YouTube)に投稿された末端肥大症患者の動画の一部とみられる。声明に示されたリンクの該当動画(http://bit.ly/X2hBSH)には、パイス紙に掲載された写真と同じ場面がある。

 がんの再発でキューバの病院で4度目の手術を受けたのち入院中のチャベス大統領は、昨年12月10日を最後に公の場に姿を見せていない。政府側の説明も一定せず、同大統領の病状は不明なままだ。今月10日に予定されていた4期目の大統領就任宣誓も延期となっている。(c)AFP