【12月7日 AFP】大統領権限の強化や新憲法草案に激しい反発が起きているエジプトのムハンマド・モルシ(Mohamed Morsi)大統領は6日、今月15日に予定されている新憲法草案の是非を問う国民投票は予定通り実施すると述べ、このところ続いている抗議行動に屈しない姿勢を示した。

 テレビで生放送された演説でモルシ大統領は、一連の抗議行動の逮捕者は80人以上に上ったと述べた。またデモ隊に襲われて重傷を負った大統領府の運転手はまだ入院していることにも触れて「私は言論の自由は尊重するが、殺人やサボタージュに訴えることは許さない」と述べてデモ隊を厳しく非難した。

 モルシ大統領の出身母体であるムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)によると、演説が終わりに近づいたころ同胞団の本部が入ったカイロ(Cairo)市内の3階建ての建物に約200人が集まり、一部が裏口から中に入って中を荒らし、放火したという。建物の外にいた警察官は、炎は大きくはなく、機動隊員がデモ隊を押し戻したと語った。

 5日に起きたモルシ大統領支持派と主に世俗派から成る反モルシ派の衝突はこれまでに死者7人、負傷者644人を数え、6月のモルシ大統領就任以降としては最大の政治危機となった。軍は6日、大統領府前の広場にいた双方のデモ参加者に退去を命じ、現場に戦車を配備するとともに有刺鉄線を張った。

 6日のテレビ演説でモルシ大統領は、野党側の代表と8日に大統領府で対話したいと提案したが、演説の内容から判断して近いうちに妥協が見出されることはないとみられる。

 エジプトのイスラム教の最高権威機関アズハル(Al-Azhar)は、モルシ大統領が11月22日に布告した大統領権限を強化する大統領令を停止するよう同大統領に求めた。またエジプト半国営の中東通信(MENA)は政治危機の中でモルシ大統領の顧問4人が辞任したと報じた。独立系新聞アルマスリ・アルヨウム(Al-Masry al-Youm)のウェブサイトによると、国営テレビの最高責任者も辞任している。

 野党側はモルシ大統領が大統領権限の拡大を取り下げ、憲法草案の国民投票を取りやめない限り抗議を続けるとしている。(c)AFP/Haitham El-Tabei