【6月20日 AFP】19日に閉幕した主要20か国・地域(G20)首脳会議の成否を測るポイントは、欧州の破局的な経済崩壊を回避するために必要な措置を講じようと、世界が欧州に本気で思わせることができたのかどうかだろう。

 メキシコ・ロスカボス(Los Cabos)に集まった大国のリーダーと専門家たちの見解が一致したのは、単一通貨圏としてのユーロ圏を崩壊の瀬戸際から引き戻そうとしている欧州の指導者たちにとって、時間切れが迫っているという点だった。

「欧州の大問題は、いまだにシステム全体の崩壊の危機から脱していないことだ。欧州は機能していない。どうすれば断崖から落ちずに済むかという話に終始している」と、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)のフランス人政治学者イブ・ティベルギアン(Yves Tiberghien)氏は警告する。

「ユーロ圏でアンワインディング(投資資金の引き上げ)が起きれば世紀の破滅的危機となり、解決は非常に困難だろう。なぜならば解決には、崩壊した機構そのものを構築しなければならないからだ──数年はかかるだろうし、そうなればG20の出番だ。欧州諸国には基本的に時間が必要だ。しばらく市場と距離を置かせる必要がある。猶予を与えるあらゆる措置が必要だ」(ティベルギアン氏)

■今後の欧州の動きに注目

 メキシコから帰国した欧州各国の首脳は、G20のメッセージを消化する間もなく来週ブリュッセル(Brussels)で開かれる欧州理事会(European Council、EU首脳会議)へ向かい、そこで行動計画に合意するとみられている。

 メキシコでG20加盟国は、欧州がなすべきことを明確に突きつけた。銀行監督制度の一元化、経済的主権の共有、苦境に置かれているEU加盟国に対する欧州中央銀行(European Central BankECB)のより積極的な支援姿勢だ。

 しかしこうした措置の多くはEU諸国の政府、特にアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相率いるドイツの保守的な政権に歓迎されていない上、実施にはEU条約やEU各国の憲法改正が必要になるかもしれない。

 G20は首脳宣言で「世界経済の成長強化と信用回復」とユーロ圏の「統合と安定を守るために必要なあらゆる措置をとる」と宣言し、その取り組みとして金融監督や銀行破綻処理、預金保険などをEU域内で一元化する「銀行同盟」の実現を支持した。

 宣言ではG20が欧州に求めるユーロ圏改革の道筋が示されたが、詳細をどう詰めていくかは来週のEU首脳会議を含め、今後数週間の欧州の動きにかかっている。

■こう着状態を打開できるか

 G20関係筋は、今やドイツまでもユーロ圏内の財政統合強化を認めつつあり、欧州金融安定化基金(European Financial Stability FacilityEFSF)による債務危機にある加盟国の国債買い入れを容認するかもしれないと話している。しかし果たしてG20は、政治的こう着状態を打開するに十分な刺激を与えることができるのだろうか。

 カナダ・トロント大学(University of Toronto)のアラン・アレクサンドロフ(Alan Alexandroff)氏は、「銀行同盟」構想にみられるように、議論のスピードが上がっているとみる。「はるか先のことだと考えられていた銀行同盟について、今はEU上層部も口にしている。今、彼らの頭にあるのは半年から1年程度の工程だ。欧州危機それ自体への対応が必要なのはもちろんだが、彼らは欧州危機が世界全体に波及する懸念をG20諸国から聞かされてもいる」(c)AFP/Dave Clark