【10月5日 AFP】チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世が、南アフリカ政府から入国査証(ビザ)を発給されなかったため、予定していた同国訪問を断念した件をめぐり、ダライ・ラマを招こうとしたデズモンド・ツツ(Desmond Tutu)元大主教は4日、「アパルトヘイト時代よりもひどい」と自国政府を非難した。

 南アのアパルトヘイト(人種隔離)政策撤廃への貢献で知られるツツ元大主教は今週ケープタウン(Cape Town)で80歳の祝賀行事の開会に際し、長年の友人で共にノーベル平和賞の受賞者であるダライ・ラマにスピーチを依頼した。しかし、直前になってもビザが出ないため、ダライ・ラマは南ア訪問を取りやめた。

 南アで「良心の番人」と目されているツツ元大主教は、テレビで全国放送された記者会見で、ジェイコブ・ズマ(Jacob Zuma)大統領を強烈に批判。「アパルトヘイト政権下でパスポートを申請していた時には、どういう決定がされるか、最後の最後まで分からなかった。しかし、今の政府はアパルトヘイト政権よりもひどい」と述べた。

 ツツ元大主教は、アパルトヘイト撤廃運動中、国際社会の支援を得ることができた南ア国民は、抑圧されたほかの人びとを支援すべきだと語った。しかし、「わたしの代表でもあるわが国の政府は、中国政府にひどい抑圧を受けているチベットの人びとを支援しないと言っているのだ。ズマよ。おまえやおまえの政府は、わたしの代表などではない。自分の利益を代表しているだけだ。警告しておこう。いつか、わたしたちはアフリカ民族会議(African National CongressANC)政権の敗北を祈り始めることだろう。なんと卑しい者たちなのか」と激しく政府を非難した。

 南ア政府は、ダライ・ラマのビザ申請に関する外部からの圧力をいっさい否定し、通常の手続きを踏んでいたと強調している。南ア外務省のクレイトン・モニエラ(Clayson Monyela)報道官は、「残念なことに、彼(ダライ・ラマ)のほうが訪問を取りやめた。彼の決断であり、それを尊重した」と説明している。

 しかし、ツツ大主教は「彼ら(南ア政府)がなんと言おうと、明らかに彼らは、中国政府を憤慨させることは何であれ、しないでおこうと固く決心していたのだ」と非難を続けた。(c)AFP/Justine Gerardy

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