【9月27日 AFP】中国外務省の報道官は26日、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世(76)の継承者認定について、ダライ・ラマが選んだ者は誰であれ「違法」だと述べた。
 
 ダライ・ラマ14世は24日、チベット亡命政府が本拠を置くインド北部ダラムサラ(Dharamshala)でチベット仏教4大宗派の指導者らとの会合を終えたあと、4200単語におよぶ声明文を発表。このなかで、90歳くらいで輪廻(りんね)転生の継続について高僧らと検討する意向を示した上で、次のダライ・ラマ認定に関する中国の介入を否定した。

 チベット仏教の伝統では、高僧らがダライ・ラマの生まれ変わりであるしるしをもつ少年を探し出して継承者とすることが習わしだ。だが、中国政府も独自に現ダライ・ラマの継承者を選出すると予想されている。

 こうしたなか、中国外務省の洪磊(Hong Lei)報道官は26日、「いかなる輪廻転生プロセスも、中国の法規制に準じたものでなければならない。よってダライ・ラマの称号も中国中央政府が授与するもので、これ以外は違法となる」との声明を発表した。

 また、「ダライ・ラマの輪廻転生については一連の宗教儀式や歴史的慣行が存在するが、ダライ・ラマ自身が継承者を指名したことは一度もない」と、ダライ・ラマによる継承者の認定を否定。さらに、「ダライ・ラマの輪廻転生は、宗教儀式や過去の慣行、中国の法規制に準じるべきだ」と断定した。

■2人のダライ・ラマが並ぶ可能性も

 一方、ダライ・ラマ14世は声明文のなかで、次のダライ・ラマの認定について疑念や策略が入り込む余地がないよう、自身の心身が健康なうちに明確な指針を示す必要性を語っている。

 これ以前にも、ダライ・ラマ14世は、慣行に反して自身が存命中の次のダライ・ラマを認定することや、チベット亡命者の中から継承者を選ぶことに肯定的な見解を示してきた。ダライ・ラマを選挙で選ぶ可能性を示唆したこともある。

 中国政府がダライ・ラマの発言を批判したことで、将来的には中国政府が認定したダライ・ラマと亡命チベット人、もしくは現ダライ・ラマに選ばれたダライ・ラマの2人が並立する可能性もある。

 同様の事態は1995年にも起きている。ダライ・ラマに次ぐ第2の高位者パンチェン・ラマ(Panchen Lama)の認定で、中国政府はダライ・ラマ14世が選んだパンチェン・ラマを否定。独自にギェンツェン・ノルブ(Gyaincain Norbu)氏をパンチェン・ラマの「転生者」として認定した。

 現在、21歳になったギェンツェン・ノルブ氏は、中国のチベット自治区支配を称えるコメントを出している。一方、ダライ・ラマがパンチェン・ラマ11世に認定したゲンドゥン・チューキ・ニマ(Gedhun Choekyi Nyima)氏は、1995年に中国当局に拘束されて以降、公の場に姿を現していない。(c)AFP