【12月8日 AFP】米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)が掲載した内部告発ウェブサイト「ウィキリークス(WikiLeaks)」公開の米政府の外交公電からは、米国の在外公館員らが、イラン、シリア、北朝鮮などの武器輸出や軍備増強を阻止しようと奮闘する姿がうかがえる。

 安全保障上の脅威となる国家の米大使館に勤務する職員たちは、怪しいダミー会社や違法武器取引への関与が疑われる銀行口座について問いただすなど、常に当該国の政府と対峙してきた。だが、こうした努力が報われる例は少なかったようだ。

 北朝鮮に関する公電では、北朝鮮が朝鮮鉱業開発貿易会社(Korea Mining Development Trade Corporation)を窓口として、中国、日本、台湾、スイスから鉄鋼や工業用部品を調達する仕組みを解説している。

 公電は2009年、北朝鮮がスリランカとイエメンに、それぞれロケット推進式発射装置とスカッドミサイル発射装置を輸出していると警告しているが、この公電は無視されたようだ。

■ヒズボラの軍事力増強に懸念

 最も重大な懸念事項と考えられていたのが、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領が中東和平の実現に向け関与を模索しているシリアとレバノンのイスラム教シーア派原理主義組織ヒズボラ(Hezbollah)の民兵組織との関係だ。

 シリアの首都ダマスカス(Damascus)の米大使館職員は2009年11月に発信した公電で、「シリアはヒズボラの軍事力増強を強固に支援している。定期的な長距離ロケット供給や誘導ミサイルの導入は、(中東の)軍事力均衡を変えるもので、2006年7月に起きたイスラエルとヒズボラの戦闘をはるかに上回る破壊的なシナリオを引き起こしかねない」と書き送っている。

 なかでも深刻視されているのが、ヒズボラがファタハ110(Fatah 110)ロケットを入手した事実だ。ファタハ110は高精度でイスラエルのテルアビブ(Tel Aviv)が射程圏内に入る。

 ニューヨーク・タイムズによると、米国防総省はヒズボラの軍事力をロケットおよびミサイル5万基と見ており、このうちファタハ110が40~50基、スカッドDミサイルが10基だという。

 公電は、新たに軍備を増強したヒズボラは、将来、いつでもイスラエルとの衝突が中東地域を巻き込んだ全面戦争に発展する恐れがあるとの懸念を報告している。(c)AFP