【10月19日 AFP】訪米中の自民党(Liberal Democratic PartyLDP)の安倍晋三(Shinzo Abe)元首相は15日、ワシントンD.C.(Washington D.C.)のシンクタンク、ハドソン研究所(Hudson Institute)で、日中関係などについて講演した。

 講演で安倍氏は、東シナ海(East China Sea)などにおける中国海軍の拡大について、「1980年代から、中国の軍事戦略は『戦略的フロンティア』という考え方に基礎を置いてきました。一言で言えば、この危険な考えは国境や排他的経済水域(EEZ)は国力で決定づけられるというものであり、中国の経済が成長を続ける限り、その勢力範囲は拡大を続けるとするものです。これをドイツの概念『レーベンストラウム』と結びつけて考える人もいるかもしれません」と述べた。

 レーベンストラウム(生存圏)とは、ドイツは、成長するためのもっと多くの土地、特に東のスラブの土地を持つにふさわしいと考えていたアドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)の思想におけるひとつの主要な信条。

 安倍氏は、アジアの「平和と安定につながる形であれば」中国との協力は今も支持していると述べ、「これが中国が従うべき原則であり、中国がこの道からはずれたならば、忠告せねばならない」と語った。

 さらに、安倍氏は、尖閣諸島(Senkaku Islands、中国名:釣魚島)沖における中国漁船の衝突事件で、複数の企業が日本の産業に不可欠なレアアースの輸出停止だったとしている出来事などを通して圧力をかけてきた中国に対し、中国人船長の釈放で応じた菅直人(Naoto Kan)首相の対応について、「非常に愚かな行動だった」と批判した。

 だが複数の米政府当局者は、菅首相は日中間の緊張緩和を試みた優れた指導者だとして称賛している。(c)AFP

【参考】安倍元首相の講演原稿(英語)