【8月19日 AFP】フランス政府が、不法移民取り締まりで拘束したロマ人約700人を19日からルーマニアとブルガリアに強制送還すると発表し、欧州連合(EU)や関係政府から「外国人嫌悪からくる排斥だ」などと強い批判が起こっている。

 ロマ(ジプシー)の強制排除をすでに開始しているパリ南東のヴァル・ド・マルヌ(Val-de-Marne)県は、代わりの住宅を与えるなどの支援は一切行わないと断言している。また、ボルドー(Bordeaux)地方南部では、ロマの家族約140人がトレーラー住宅で居住を続ける承認を裁判所に求めていたが、却下された。

 ロマ人口の多いルーマニアのテオドル・バコンスキ(Teodor Baconschi)外相は18日、仏ラジオRFIのルーマニア局に対し、「経済危機を背景に、ポピュリズムや外国人嫌悪が強まる危険性を心配している」と深い懸念を表明した。

 ロマに関するルーマニア担当相によると、18日から週末にかけて、フランスから追放されたロマ人を乗せた飛行機が同国に到着する。

 仏政府はこれまでも「自主的帰還」と称する措置で、ルーマニアおよびブルガリアへのロマ人の帰国を促しており、前年は両国へ計約1万人が帰国したが、ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領が賛否両論の中、コミュニティーごとの放浪生活を基盤とするロマなどの移動生活者集団の強制排除に乗り出して以来、仏政府がロマ人を強制送還するのは今回が初めてだ。

 EUの行政執行機関である欧州委員会(European Commission)は18日、仏政府に対し、EUが保障している域内の「移動の自由」を順守するよう警告した。 

 しかし仏外務省は、「不法移民のキャンプ撤去に関する今回の一連の措置は、EUの規定に完全に準拠したもので、各協定で保障されているEU市民の移動の自由を妨げるものではまったくない」と反論している。

 フランス国内にいる東欧出身のロマ人は約1万5000人とされている。(c)AFP

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