【7月7日 AFP】英国政府は6日、2001年9月11日の米同時多発テロ以後、同国の情報当局者が国外でテロ容疑者の拷問に荷担していたとの疑惑に関して、調査委員会を設置する方針を明らかにした。

 デービッド・キャメロン(David Cameron)英首相は議会下院に対し、調査委は年内に活動を開始し、12か月以内に報告書を発表するとの見通しを示した。この調査委は、ピーター・ギブソン(Peter Gibson)元判事が委員長を務める。

 キャメロン首相はまた、英裁判所による機密情報の取扱方法について見直しを行う計画を表明したほか、機密情報を開示するにあたり米国との関係が「緊張」したことがあったことも明らかにした。

■英当局者の拷問関与、12件の報告

 英国の裁判所は2月、米当局者が英国在住のビンヤム・モハメド(Binyam Mohamed)氏を尋問した際の待遇についてまとめられた過去の機密文書の開示を命令し、米当局は反発していた。モハメド氏は、キューバ・グアンタナモ(Guantanamo)米海軍基地のテロ容疑者収容施設に拘束されていた。

 英政府は英政府当局者が拷問を実施したり、拷問を推奨したり、拷問を補助したことはないと強調しているが、情報当局者が虐待行為を目撃したなど、拷問に関する事例が12件報告されている。

 キャメロン首相は調査について、関連する機密情報の性質上、すべてを開示することはできないとしながらも、一部の公聴会などは公開で行われるとの見通しを示した。

 モハメド氏の事例は、外国当局が行った拷問に英情報当局者が加わっていたとされる疑惑の中で最も有名な事例。

 エチオピア出身で2001年にアフガニスタンに滞在していたモハメド氏は、翌2002年にパキスタンで拘束された。同氏は、パキスタンで英情報局保安部(MI5)要員から尋問を受けたことを明らかにするとともに、その要員は米国の尋問官のサポート役だったと語っている。

 モハメド氏はその後、モロッコに移送され、地元当局者によって拷問を受けたと主張している。この地元当局者は、英情報当局から提供された情報を基に尋問を行っていたという。この時の拷問の様子を、モハメド氏は「中世の拷問だ」と表現している。

 モハメド氏はグアンタナモの施設で4年以上を過ごした後、2009年になって解放された。

 キャメロン政権はすでに調査委を設置することを示唆していたが、詳細が明らかになったのは今回が初めて。(c)AFP/Katherine Haddon