【5月20日 AFP】韓国海軍の水兵ら46人が死亡した哨戒艦「天安(チョンアン、Cheonan)」の沈没の原因について、同国の民軍合同調査団が「北朝鮮の魚雷攻撃」だったと結論付けたが、韓国政府が北朝鮮への報復を望んでも適切な選択肢は、特に中国が傍観的な態度を維持した場合には、ほとんどないと評論家らはみている。

 韓国以外の専門家も加わった調査団は3月26日の爆発・沈没について、「決定的物証」などから総合的に判断し、哨戒艦は北朝鮮の小型潜水艇から発射された魚雷によって破壊されたと結論づけた。

 韓国は全面戦争を引き起こす恐れから軍事行動による報復は選択肢から排除しているとみられるが、国連安保理(United Nations Security Council)に新たな対北朝鮮制裁を提起する方針をすでに明らかにしている。

■中国の動向が鍵

 AFPの取材に答えた韓国・東国大学(Dongguk University)の金龍見(キム・ヨンヒョン、Kim Yong-Hyun)教授は、北朝鮮の潜水艇がどうやって韓国の領海に潜入し、哨戒艦を攻撃した後に帰港したのかについて調査団は説得力のある証拠を示していないため、中国は納得しないだろうと予測する。そして中国が国連制裁を支持しなければ、韓国政府が持つ有効な選択肢はそう多くないとみる。

「全面戦争突入」の脅威は言葉の上の誇張でしかない、と否定しながらも金教授は、北朝鮮側が緊張をさらに高め、黄海(Yellow Sea)の北方限界線(NLL)付近での砲撃や、短距離ミサイル実験などを再開させる可能性は十分にあると語った。

■新たな瀬戸際政策の始まり?

 またソウル(Seoul)にある北朝鮮大学院大学(University of North Korean Studies)の梁茂進(ヤン・ムジン、Yang Moo-Jin)教授も、国連安保理の制裁を中国が支持することはないと予測する。「米議会は北朝鮮をテロ支援国家に再指定するかもしれないが、そうした事態になれば、北は大陸弾道間ミサイルの開発と3回目の核実験で対抗するだろう」

 梁教授は米国と中国に、韓国軍哨戒艦の沈没と北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議の再開は切り離して考えるべきで、「地域の冷戦」を復活させないためにも落ち着いて事態に対処しなければならないと忠告する。

 保守派の米シンクタンク「ヘリテージ財団(Heritage Foundation)」の専門家、ブルース・クリンガー(Bruce Klingner)氏は、6か国協議は「すでに生命維持装置を付けられたような状態だったが、哨戒艦沈没の調査結果によって、ついに死んでしまった」と悲観的な見方を示した。さらにクリンガー氏は、11月にソウルで開催が予定される主要20か国・地域(G20)サミットへ向け、緊張を高めようと狙う北朝鮮にとって、哨戒艦の沈没はほんの前哨戦かもしれないと警鐘を鳴らした。(c)AFP/Park Chan-Kyong