【11月9日 AFP】ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)首相は、8日に放映されたインタビューで、旧ソ連国家保安委員会(KGB)の情報員として自らドレスデン(Dresden)で過ごした旧東ドイツをなつかしみ、これまであまり語られてこなかった情報員としての過去の一端を垣間見せた。

 プーチン首相がインタビューに応じたのは、露NTVテレビが放送した、ベルリンの壁(Berlin Wall)崩壊20周年の記念番組。ドレスデンに滞在したのは1985~90年の5年間で「心温まる思い出」と語り、ドイツ語を習得したり、東ドイツ側の情報員と接触するといった任務のほか、クリスマスに山歩きを楽しんだりもし、良い思い出をもっていると語った。

「同僚たちと友情関係を築き、われわれが知らなかった世界を知り、言葉に慣れ、子どもたちは東ドイツの保育園に入れた。近所の人たちとも話した」。そして「まったく異なる世界への扉となったあの滞在には、非常に感謝している。非常に興味深かった。その意味で懐かしさを感じる」と語った。

 ただし「(東西統一後の)ドイツの発展をわれわれは目にしているし、新たな基盤の上に良好な関係を築いていることを幸せに思う。いかなる郷愁もそれをしのぐものでは、もちろんない」とも述べた。

 民主化を求めるデモなどで東ドイツ国内が揺らぎ、壁崩壊へと突き進んでいった1989年11月、ドレスデンのKGB支部にもデモが押し寄せた。「群衆に、われわれのいる建物はソ連軍に属し、協定に従ってわれわれにはドレスデンに駐在し、任務を遂行する権利があることを説明した。しばらくしてデモは解散したが、当時は全体的に嵐のような、動乱の時代だった」と、プーチン首相は振り返った。

 KGB時代の詳しい経歴についてプーチン首相が打ち明けたのは、今回がほぼ初めてだ。

 東西ベルリンを隔てていた壁を訪れたときは「不自然で非現実的」だと思ったという。しかし、第2次世界大戦後の東西ドイツの分裂については、終戦当時のソ連の最高指導者ヨシフ・スターリン(Joseph Stalin)の下では「ソ連の外交政策にドイツの分断という課題は設定されていなかった」と述べ、連合軍の西側諸国に非があったと語った。(c)AFP/Stuart Williams

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