【7月31日 AFP】次の政権を担うのは誰か――来月の衆院選を前に火花を散らす自民党(LDP)の麻生太郎(Taro Aso)総裁と民主党(DPJ)の鳩山由紀夫(Yukio Hatoyama)代表との対決は、1950年代から続く政治家一族の因縁を引きずり、日本政界にはびこる裕福で強い影響力を持った政治家一族出身の「世襲議員」問題が改めて注目される契機ともなっている。

 地盤と資金団体を父親からそのまま受け継いだ「おぼっちゃま」とも揶揄される世襲議員は、国会議員のおよそ3分の1を占める。政治が「ファミリービジネス」化した選挙区では多くの場合、新人の台頭が妨げられる。

 神奈川11区から出馬する民主党の横粂勝仁(Katsuhito Yokokume)氏(27)は、この問題を実感している。

■「小泉王国」で苦戦

 横粂氏は、父親はトラックの運転手。奨学金をもらいながら東京大学で学び、弁護士になった経歴の持ち主だ。毎日自転車で走り回り、駅前に立って通勤客らと言葉を交わすなど、横須賀市で懸命の選挙運動を続けてきた。各世論調査で民主党の有利が伝えられる中、横粂氏は、厳しい選挙戦だと感じている。なぜなら、対抗馬は小泉純一郎(Junichiro Koizumi)元首相の息子の小泉進次郎(Shinjiro Koizumi)氏(28)なのだ。

「なにかこうしたいという議論や政策を聞いてもらうためには、まずわたしの場合、顔と名前を覚えてもらうことが前提なんです。ここは『小泉王国』ですから」

「(進次郎氏が後継と決まる)以前から、わたしはこの選挙区から出たいと挙げていました。なぜなら、小泉前首相がやったことは、わたしがしたいことと正に正反対だからです。今の政治を、もっと普通の人の目線に立った政治に変えたいです」

 小泉元首相は前年、自身の引退と進次郎氏の後継を発表し、「親バカですが息子をよろしく」と後援者らに頭を下げた。進次郎氏が当選した場合、「小泉王国」が4代続くことになる。地元のある議員は「北朝鮮の金王朝よりも長いな」と笑う。

 6月の横須賀市長選では、無所属の候補が小泉元首相の支持する現職を敗る大波乱があったが、横粂氏は、名門出の候補を破るのはたやすいという幻想は抱いていない。

■立て続く「辞任劇」で高まった世襲批判

 世襲への批判は、安倍晋三(Shinzo Abe)氏、福田康夫(Yasuo Fukuda)氏と首相が2代続けて、就任1年程度で突然辞任したころから激しくなった。日本大学(Nihon University)法学部の岩井奉信(Tomoaki Iwai)教授は、「辞任劇があってから、世襲政治家にひ弱というイメージができてきた。しかしながら、本当の世襲の問題は、世襲候補は、親から後援会をそのまま引き継ぐ結果、全く地盤のない人間が政治に入る余地を阻んでいるということだ」と説明する。

 麻生氏と鳩山氏も、それぞれ祖父が首相経験者。鳩山氏の祖父の一郎(Ichiro Hatoyama)氏は、麻生氏の祖父、吉田茂(Shigeru Yoshida)元首相の後に首相となり、1955年に初代自民党総裁となった。ただ、鳩山氏は、父親とは違う選挙区から出馬してきたので自分は世襲議員ではないと主張する。

 民主党は、現職国会議員の子や配偶者ら3親等内の親族が、同一選挙区から連続出馬する場合は公認しないことを公約に掲げている。一方の自民党内では世襲制限に反対論が多く、これまでのところ公式の選挙政策とはなっていない。(c)AFP/Kyoko Hasegawa