【6月29日 AFP】1950年6月25日の朝鮮戦争勃発から59年を迎え、韓国国家情報院(National Intelligence ServiceNIS)がインターネット上に公開した北朝鮮のスパイを探すビデオゲームが、同国のリベラル派の間で波紋を呼んでいる。

 通常は宣伝嫌いの情報院が公開したのは自前で製作したフラッシュビデオによるゲーム。北朝鮮のスパイと同国の協力者を探す内容になっている。

 22日から7月21日までの公開期間中にゲームをやって応募すれば、抽選で200人にノート型パソコンやデジタルカメラ、ゲーム機などさまざまな景品が当たる。また、個人のブログにリンクを張ったブロガーは特製腕時計が当たる。
 
 情報院の報道担当官はAFPの取材に対し「安全保障に関する国民意識を喚起するために計画した。特に北朝鮮についてよく知らない若者たちの意識を高めたい」と語った。同担当官はリベラル派のグループの間でゲームに批判があがっていることについてはコメントを拒否した。

 リベラル的なグループの間ではこのゲームについて、南北統一の推進に関わる運動家らはスパイの可能性がある、という誤った認識を広めかねないと批判している。

 ゲームのなかでプレーヤーは、北朝鮮を賞賛する人物や、経済協力や離散家族の再会といった話題を頻繁に口にして南北統一を支持する運動家らを、注意深く監視するよう求められるからだ。

 独立系の京郷新聞(Kyunghyang Sinmun)では、南北統一を支持する人はスパイや左派だとみなすよう情報院が誘導していると非難している。

■本当のスパイはプラカードは持たない?

 ゲームのファーストステージではまず、北朝鮮の故金日成(Kim Il-Sung)前主席を支持するプラカードを持った人物などがいる公園のなかで、プレーヤーはスパイとおぼしき人物を特定する。 

 さらに、インターネットカフェで「不純な」記事を投稿した後に足早に去る人物や、反米集会や反政府集会で根拠のない噂を広めたり、暴力を扇動する人物を見張るよう指示される。

 機密に関連する軍事施設や工業施設を撮影する者や、口を手で覆いながら話す者、街頭デモに棒を持ってくる人物などが北朝鮮スパイの可能性があると設定されている。

 地元英字紙「コリア・タイムズ(Korea Times)」によると、情報院は漫画のようなキャラクターを登場させ、流行に敏感でユーモアもあるように見せようとしているようだが、インターネット・ユーザーたちはそのやり方を冷やかしているという。

 同紙が引用したあるブロガーは「知っている限り、これまでの人生でスパイに会ったことなんかないけれど、本当のスパイが公園で『金日成最高』というプラカードを持ったり、無線機を持って歩いたり、北朝鮮寄りの書類や本を読んでいるとは思わない」と述べている。(c)AFP


【参考】韓国国家情報院のゲームページ(韓国語)