【6月16日 AFP】(一部更新)米バラク・オバマ(Barack Obama)政権の安全保障政策を、ディック・チェイニー(Dick Cheney)前副大統領が強烈に批判したことに対し、レオン・パネッタ(Leon Panett)中央情報局(Central Intelligence AgencyCIA)長官が「チェイニー氏はまるで米国に対する攻撃を望んでいるようだ」と強く反撃した。

 14日発売の米誌ニューヨーカー(New Yorker)最新号のインタビューで、パネッタCIA長官は「チェイニー氏は安全保障問題で、政権の弱点をかぎまわっている。彼の真の意図はまるで、自分の主張を通すために、わが国が再び攻撃されることを望んでいるように聞こえる。非常に危険な政治だと思う」と述べた。 

 ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前政権下で、テロリスト容疑者に対する尋問に「水責め」などの拷問的手法を導入した際、自ら率先して導入に動いたひとりがチェイニー氏。5月に、オバマ政権が前政権の安全保障政策から転換したことを激しく批判した。

 オバマ政権が拷問的な尋問手法を禁止したことや、キューバ・グアンタナモ湾(Guantanamo Bay)にある米海軍基地内のテロ容疑者収容施設閉鎖計画について、チェイニー氏は「米国の安全性を損なう政策」「公正さを装った無謀な策」などと酷評した。また、ブッシュ政権の「テロとの戦い」で導入された政策をオバマ政権がくつがえしていることは「極度におろか」などとも述べた。

 米史上、影響力の強かった副大統領のひとりに数えられるチェイニー氏によるこうした発言は「危険な政治だ」とパネッタ氏は強く非難した。

 またNBCテレビの報道番組「ミート・ザ・プレス (Meet the Press) 」で、チェイニー氏に対するパネッタ氏の反撃に同調するかと問われたジョー・バイデン(Joe Biden)米副大統領は、チェイニー氏の発言の動機は問わないが、「米国の安全をいかに守るかに関するディック・チェイニーの判断は誤り。われわれの考えこそが正しい」と明言した。

 これに対しチェイニー前副大統領は15日、パネッタCIA長官の発言が間違って引用されたものだと願うと述べ、「重要なことはオバマ政権が、過去8年間われわれの安全を守ってきた政策を続けるかどうかということだ」と指摘した。

 一方、CIAのポール・ギミグリアーノ(Paul Gimigliano)氏はAFPに対し、パネッタ長官は前副大統領が米国に対する攻撃を望んでいると言ったのではなく、オバマ政権の安全保障政策は米国の安全を損なう政策だとの前副大統領の主張に強く反対の意を表したかっただけで、誰かが何らかの意図を隠しているのではないかとの疑いを表明したものでもないと述べた。(c)AFP