【6月9日 AFP】物議を醸すイランのマフムード・アフマディネジャド(Mahmoud Ahmadinejad)大統領の国際社会における存在感は強いが、このイスラム教の共和国の最高権力を握っているのは実は大統領ではない。最高指導者のハメネイ(Ali Khamenei)師だ。

 12日の大統領選による進退が注目されるアフマディネジャド大統領は内政、特に経済については強い発言力があるが、同国の核開発や米国との関係など、外交になると最後に決定権を持つのはハメネイ師だ。

 アフマディネジャド大統領はこれまでの4年の在任期間、過去の大統領にない存在感を示してきた。しかし、イラン政治に詳しい米シンクタンク「カーネギー国際平和基金(Carnegie Endowment for International Peace)」のカリム・サジャドプアー(Karim Sadjadpour)氏によると、大統領は今も「イランでは第2の権力者にとどまっている」という。イラン憲法でも「政策全般を定めるのは最高指導者」となっている。

 イランの首都テヘラン(Tehran)に駐在する欧米側の外交官のひとりは、この4年間、アフマディネジャド大統領は大統領権限の拡大に努めてきたという。「公には彼は大統領職に定められた制度的制限を受け入れているが、高官たちを常に入れ替えることで、その制限に縛られないようにしている」。

 貧困層に迎合した大統領の人気取り的な経済政策に反対した中央銀行総裁2人、経済財務相1人も更迭された。保守派の高官のひとりは「経済問題における政府の影響力は重大。議会と調整するなかで政策を策定、実施するのは政府だからだ」

 しかし、こうした大統領の自由な術策は、外交や国民の自由といったより微妙な分野では考えにくい。例えば、モハマド・ハタミ(Mohammad Khatami)前大統領は98年の学生運動の鎮圧を防ぐことができなかったし、報道に対する司法の大規模な弾圧も止められなかった。

 イランの外交についても、先の高官は「大枠の方向を示すのは指導者(ハメイニ師)で、それを議会が承認し、政府が実行する」と語った。欧米の外交筋もこの見解に同意する。「大統領は、該当する外交事項に関する世論を形成して影響は与えるが、決定は下さない」(c)AFP/Pierre Celerier