【4月28日 AFP】実質的にというよりも流儀の差のほうが際立つが、就任後100日が経過したバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は、外交分野でジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前大統領よりも謙虚さを見せ、以前の敵とも接触しようとするなど、前政権の姿勢とは決別した感がある。

 明白なのは、オバマ政権は長期的な問題解決に多国間外交を用い、米政府にとって新たな、開かれた姿勢を打ち出してはいることだ。その一方で、ブッシュ外交が残した政策の大半がそのまま残ってもいる。

■謙虚さと歩み寄り、国内では批判も

 発足以降、オバマ政権は国際的な経済危機の解決に向け、またアフガニスタンや中東、北朝鮮をあいてとする困難な課題の克服に向け、同盟国ほか他国の意見を聞く必要性を強調してきた。ブッシュ政権2期にわたり冷え切っていた米露関係にも、「リセット・ボタン」を押すと明言している。

 アジア各国から欧州、中東、中米と駆け抜けた各国歴訪で、オバマ大統領と彼の筆頭外交官であるヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)国務長官は、米政府が犯した過ちと、他国の助けなしにはそれらの問題を解決できないことを認めた。

 こうした自己批判的姿勢は、「傲慢な」ブッシュ政権を憶えている国外から評価されてはいる。しかし、国内的にはアメリカの「価値下げ」という痛烈な反発も招いている。

■「新たな関与の時代」掲げる動き

 就任からわずか3ヶ月で、オバマ政権はイランやシリア、キューバ、ベネズエラといった以前の「敵国」との外交にも小さなステップを踏み出した。いずれもブッシュ政権が長らく制裁を課し、孤立させようとしてきた国だ。

 中東やアフガニスタン、パキスタン、北朝鮮担当の特使、さらにはユーラシア地域のエネルギー問題や気候変動問題にも特使を任命したことにも、主要な問題点により鋭く焦点を当てようとしているオバマ大統領とクリントン長官の意向が示されている。ブッシュ前大統領はまったくやろうとしなかったことだ。

 オバマ大統領は就任数日でキューバにあるグアンタナモ(Guantanamo)米軍基地内のテロリスト容疑者収容施設の1年以内の閉鎖を命じ、また拷問的な尋問方法を禁じ、ブッシュ政権の対テロ政策方針を明確に拒絶した。

 もうひとつブッシュ政権との決別といえば、「新たな関与の時代」を掲げるオバマ政権は、国連人権理事会(UN Human Rights Council)の理事国選挙に初出馬も表明している。

 こうした新たな流儀にもかかわらず、オバマ政権が山積みの問題を解決できるかどうかは、現時点では分からない。過去数十年の米国大統領の中で最も困難な課題の山と向き合っている、という者は多い。

■前政権からの実質的な大転換、まだ打ち出せず

 現在のところ、新たな外交姿勢はなかなか功を奏していない。北朝鮮外交では特使を任命したものの、ブッシュ政権時の6か国協議の枠組み維持が精一杯の状況だ。

 米外交の重鎮リチャード・ホルブルック(Richard Holbrooke)を特使に起用したアフガニスタン、パキスタン問題でも、ブッシュ政権とは異なる包括的外交を試みているが、アフガニスタンの民主化を目指すというよりも、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の打倒に重きが置かれ、短期間での増派によってブッシュ政権の後を引き継いでいるようにも見える。

 イラクからの米軍撤退期限の大枠はブッシュ政権が定めたものだし、中東和平交渉でもブッシュ政権が米アナポリス(Annapolis)で開催した中東和平国際会議で目指したイスラエル、パレスチナの「2国家共存」案の追求を踏襲している。パレスチナのイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)が武装闘争を止めるまで、交渉に拒否しない構えなども前政権と変化ない。

 当初は楽観的な進展が期待された対ロシア外交でさえ、雲行きがかげりつつある。北大西洋条約機構(NATO)が計画を明らかにしたグルジアでの軍事演習に対し、ロシア政府は「挑発的だ」と強い不快感を示しており、下火になったかと思われたグルジア・南オセチア紛争をめぐる緊張感を再燃させる恐れも出ている。(c)AFP/Lachlan Carmichael