【1月29日 AFP】ベルギー・ブリュッセル(Brussels)に本部を置くシンクタンク「国際危機グループ(International Crisis GroupICG)」は28日、イラクで31日に実施される地方議会選挙について報告書を発表した。戦争で荒廃した同国にとって「転機」となる可能性もあるとしつつ、不正投票が選挙の成功を脅かす懸念は残ると指摘した。

 イラク全18州のうち14州で行われる地方議会選挙は、同国の治安状況や政治的安定を見極める試金石になるとみられている。

 31日の投票日に先立ち、28日には繰り上げ投票が始まった。全有権者が一斉に投票を行った前回選挙で起きた治安、物資輸送、不正投票などの問題を回避することが狙いで、警官、兵士、入院患者、未決拘置者など61万4000人が同日午前7時(日本時間午後1時)から午後5時(日本時間午後11時)までの時間に投票した。

 ICGは報告書で、「2005年1月の前回選挙は全面的な内戦につながったが、今回の選挙ではより平和的な転機となる可能性もある」と述べている。

 今回の選挙は、前回ボイコットしたイスラム教スンニ派政党から多数が参加していることから、2005年とは大きく異なるとみられている。前回選挙では、スンニ派政党のボイコットにより、シーア派およびクルド人政党が権力を掌握したが、それに怒ったスンニ派住民による反政府活動によってこれまでに数万人が命を落としてきた。今回は、前回と比較して、イラクの人口を構成するすべての層から、より公平に代表者が出ているという。

 一方でICGは、不正工作で選挙が台無しになる可能性も指摘しており、現政権が選挙に影響を行使する可能性を指摘している。国連(UN)は800人規模の国際監視団が選挙を監視すると発表している。(c)AFP