【5月29日 AFP】発生から2週間に及んでいる南アフリカでの移民に対する暴力や襲撃は、変化を求め世論のいらだちが高まる一方で、「神聖な統治権」を自負する与党アフリカ民族会議(African National CongressANC)との隔たりが広がっている情勢を浮き彫りにした。

 民主化以降、実質一党体制にある南アフリカでは、2009年に行われる総選挙でも与党ANCが敗北する気配はほとんどないが、これまでに56人が死亡した暴動の中で表面化したのは、ANCの支持基盤である都市部の黒人貧困層の真の怒りだ。

「ANCはアパルトヘイトからの解放という『神話』に浸かったまま、自己満足に陥っている。そこから脱却しなければならない」と、シンクタンク「South African Institute for Race Relations(南ア人種関係研究所)」のFrans Cronje副ディレクターは厳しく語る。「有権者は結果をほしがっている。来年の選挙後に就任するANCの次の指導部は、政策を結果に結びつける必要がある。次の5年間、彼らは安穏としていられないだろう」

 移民に対する襲撃が発生するまでには、その下地となる数多くの理由が横たわっていた。食糧価格の高騰やインフレといった経済問題、移民、治安、住宅といった主要分野における政策失敗などだ。

 襲撃対象の多くはジンバブエからの移民たちだが、ジンバブエ経済の崩壊に非のあるロバート・ムガベ(Robert Mugabe)大統領に対して圧力をかけることができなかったとして、南ア世論の非難は自国のターボ・ムベキ(Thabo Mbeki)大統領にも向けられた。

 信用のおける野党と民主主義の伝統の双方の不在から、国民のフラストレーションは投票行動よりも暴力を通じた発散に転じている、とプレトリア大学(University of Pretoria)国際政治学研究センターのアナリスト、Donrich Jordaan氏は指摘する。

 ムベキ大統領は26日、現在日本で開催中のアフリカ開発会議(Tokyo International Conference on African DevelopmentTICAD)に向かったが、反対勢力は外遊に適切な時機ではないとこれを阻止しようとした。シンクタンク安全保障研究所のJakkie Cilliers氏は「国民が何を気にし、新聞が何を書いているのかに単に彼は関心を払っていない、という印象しか受けない」と鋭く批判した。(c)AFP/Adam Plowright