【3月13日 AFP】(3月13日 一部更新)高級売春組織の顧客だったことが判明した米ニューヨーク(New York)州のエリオット・スピッツァー(Eliot Spitzer)知事(53)をめぐる不祥事は、同知事の辞任表明に加え、相手の女性の身元が公開されたことでますます騒ぎが広がっている。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times、電子版)は12日、検察の訴追請求状に「クリステン」という名で記載されていた知事の「相手をした」女性は、富裕層向けの高級売春組織「エンペラーズクラブVIP(Emperors Club VIP)」に所属するアシュリー・アレクサンドラ・デュプレ(Ashley Alexandra Dupre)さん(22)だと報じた。

 同紙はさらに、スピッツァー知事はニューヨーク州司法長官だった10年前から売春組織を利用し、つぎ込んだ費用は8万ドル(約820万円)以上になると報じている。

■相手の女性は22歳の歌手志望コールガール

 同紙によるとデュプレさんは歌手志望で、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のマイスペース(MySpace)の自分のページにはこれまでの生い立ちを「崩壊した家庭」を出てドラッグ、虐待を経験し「ボロボロになったホームレスだった」と書き込んでいる。また今は「ニューヨークに住み、世界の頂点にいる。ここには2004年からいてこの街も生活も愛しているが、私の歩んできた道は楽ではなかった」と記している。

 今回の事件については同紙インタビューに答え「怪物みたいに思われたくない。(今回の出来事は)辛く、複雑な思いだ」などと語った。スピッツァー知事との関係についてはコメントを拒んでいる。

 デュプレさんの母親も同紙取材に応じ、娘が1時間1000ドル(約10万円)ものエスコートを行う売春婦をしていたことに大きなショックを受けたと語った。「とても賢い娘だが、まさか相手が州知事だったとは思わなかっただろう。しかし賢いとは言ってもまだ22歳。自分で扱える範囲を越えることに巻き込まれてしまったと思う」と話した。

 デュプレさんは当局からは摘発されていないが、ニューヨーク・タイムズは「エンペラーズクラブ」摘発と捜査の中で、デュプレさんは目撃者となりうると指摘している。報道によると、スピッツァー知事は同クラブに「顧客9番」と登録されていたことが、前週検察が提出した訴追請求で明らかになっている。

 請求状では、これまでに「顧客9番」が同クラブをいかに利用していたかや、「クリステン」をニューヨークからワシントンD.C.(Washington D.C.)まで出張させた詳細などが示されていた。同状によると「顧客9番」は2時間のサービスに対し、4300ドル(約43万円)を彼女に支払ったとされている。

■通信傍受にかかった売春クラブへの電話

 スピッツァー知事は3月に入り、米議会への出席を翌日に控えた出張先のワシントンD.C.から売春婦を呼び寄せようとし、組織を捜査中だった当局に通信を傍受されたとみられている。

 しかし報道では知事に対する捜査は当初、知事が口座を持つ銀行に対し複数の取引から自分の名前を削除するよう依頼し、不審に感じた銀行側が税務当局に通報したことから始まったとされている。

 ハーバード大学(Harvard University)のアラン・ダーショウィッツ(Alan Dershowitz)法学部教授は、同クラブの摘発を目指す過程で当局は5000件の電話を盗聴し、6000通の電子メールを傍受したと、「エリオットのかかった罠」と題したウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)紙への意見投稿で指摘した。

 同教授は、こうした「スパイ技術」は「普通の人々を罠にかけるためではなく、テロリストたちを捕らえるためにより適しているものだ」と述べ、今回の傍受が政治的動機に基づいたおとり捜査だった可能性を示唆した。(c)AFP/James Hossack