【2月11日 AFP】トルコ国会で大学内での女性のスカーフ着用を認める憲法改正案が可決されたことから、国是である政教分離の世俗主義をめぐる政府と世俗主義擁護派の対立激化を懸念する声が国内で拡がっている。

 改正案はレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)首相率いるイスラム色の強い与党・公正発展党(AKP)が提出したもので、同党が過半数を占める国会で9日、可決された。

 これに対し主要日刊紙ヒュリエト(Hurriet)やミリエト(Milliyet)は10日、それぞれ「カオス(大混乱)」、「危険な分裂」などの見出しで改正案可決を報じた。

■大学が論争の最前線に

 イスタンブール大学(Istanbul university)で経済学を教えるAhmet Insel教授は、大学構内がイデオロギー論争の最前線となる可能性が高いと指摘。「スカーフを着用した女子学生を締め出す大学も出てくるだろうし、教授陣の中にも意見の対立が起こるだろう」と述べた。

 他の大学関係者らも、スカーフ着用をめぐって構内で衝突が発生し、授業をボイコットする女性教授も出てくるのではと懸念する。

■「国是への挑戦」か「思想の自由」か、割れる見解

 大学でのスカーフ着用の禁止は1980年、無血クーデターで実権を掌握した軍部によって導入された。この措置のため、これまでイスラム教徒の女子学生はカツラでスカーフを隠して授業に出席したり、高等教育そのものをあきらめる女性も少なくなかった。

 与党・公正発展党は、禁止令は「思想の自由」「教育を受ける権利」に反する人権侵害だと主張している。

 一方、国軍や司法関係者、教育関係者に多い世俗主義の支持層は、大学内でのスカーフ着用の許可は「政教分離」への挑戦であり、今回の改正が女性にスカーフ着用を強要する圧力となりかねないと指摘。着用の対象がさらに高等学校や政府機関に拡大し、トルコがイスラム教国に傾くのではないかと警戒している。

 また、改憲支持派の一部からも、政府は十分な審議を行わないまま可決を急ぎ、女性の教育をめぐる問題の根本的な解決を図らなかったのは「不誠実」だとの批判が出ている。(c)AFP/Nicolas Cheviron