【1月30日 AFP】北京郊外に住む人権活動家の胡佳(Hu Jia)氏と妻の曾金燕(Zeng Jinyan)氏は、かつては客を自宅に招き、お茶を飲みながら、北京五輪(Beijing Olympics)が中国民主化の起爆剤になることへの期待を語っていた。

 それが今では、2人の住むアパートは立ち入り禁止に。タイム(Time)誌の「世界で最も影響力のある100人」に名前を連ねている曾氏が前月、国家政権転覆扇動の疑いで拘束され、妻の方は自宅軟禁に置かれているためだ。

 今週2人のAFP記者がアパートを訪れたところ、アパートには規制線が張られ、複数の私服警官に制止された。「保安上の問題が発生したため調査中。詳細は言えない」のだと言う。

 終身刑に直面している曾氏は、「国家機密が漏れる恐れがある」として弁護士との面会が許されず、「危険人物」との理由で健康不安にもかかわらず保釈も認められていない。

 曾氏の逮捕には、欧米のみならず国内の活動家からも非難が浴びせられている。1989年の天安門事件の際に戦車にひかれて両足を失った北京の弁護士・人権活動家のXu Zhiyong氏は、「曾氏は不正にあえぐ数千人の市民の声を代弁している」という内容の抗議文書を胡錦濤(Hu Jintao)国家主席に送付した。

 夫妻のこうした運命は、北京五輪を前に当局が反体制派の取り締まりを強化している事実を物語る。活動家らは「政府は、五輪招致の際の『人権侵害をやめる』との約束を破っている」と世界に訴えているが、その答えは「当局によるさらなる人権侵害」だという。

 中国の人権問題を監視するChinese Human Rights Defendersは先ごろ発表した報告書で、ここ数週間で多数の知識人、活動家が自宅軟禁に置かれ、言論規制も強化されていると指摘。「五輪が近づくにつれて弾圧も強まる」と予想している。(c)AFP/Charles Whelan