【1月28日 AFP】インドネシアの元独裁者、スハルト(Suharto)元大統領の死去を受け、同政権期間中の不正蓄財について、スハルト一族に対する追及を求める声が同国のエリート層の間で高まっている。スハルト氏の子どもたちが法の裁きを受ける可能性も出てきた。
 
■不正蓄財は数千億円規模

 スハルト政権時代、6人の子どもたちの行動は国民の多くから、縁故主義的な行為の中でも最悪な越権だとみなされていた。失脚後もスハルト氏に愛着を持つ国民は多かった一方で、その子どもたちに対する世論感情は好ましくない。

 32年間に及んだスハルト政権下で、子どもたちは一族の人脈を利用し、優先的な契約や見返り、不正な規制などの密約を交わしたと疑われる数々の複合企業を操り、膨大な資産を蓄積した。各国の汚職・腐敗を監視する非政府組織(NGO)「トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)」の2004年の報告によると、父である故スハルト氏を含め一族の不正蓄財は15億ドル(約1600億円)から35億ドル(約3730億円)の間の金額に上ると推測される。

■スハルト氏が死去したとき「事情は変わる」

 民主化運動の高まりを受けて1998年にスハルト氏が退陣し、それ以上の不正は食い止められたが、同氏一族は腐敗追及の動きから逃げ続けてきた。しかしスハルト氏の死去により、「開発の父」と呼ばれる同氏に恩義を感じている同国エリート層の多くが「不正を自由に追及するできるようになった」と「インドネシアTI」のTodung Mulya Lubis代表はみる。同国の政治家の多くには「老人は尊重しなければならない。しかし、老人が亡くなった時、物ごとは変わる」という態度がみられるという。

 スハルトの子どもたちはすでに予防手段として、問題視される資産も含め、知名度の高い資産を売却するなどして、一族関連企業による「帝国」を合法化する措置に打って出ている。しかし、政府の慈善財団の資金を流用した容疑でのスハルト氏に対する民事訴訟による追及は、子どもたちも逃れきれないだろうとLubis代表は述べる。スハルト氏の遺産相続人となる予定の子どもたちには、政府による14億ドル(約1500億円)以上の資金返還が求められる可能性が高いという。(c)AFP/Aubrey Belford