【1月6日 AFP】米アイオワ(Iowa)州で3日に行われた2008年大統領選の共和党党員集会で勝利したキリスト教プロテスタント、バプテスト派牧師のマイク・ハッカビー(Mike Huckabee)元アーカンソー(Arkansas)州知事に、新たな「政敵」が出現した。科学者らが、進化論を信じないハッカビー氏が大統領になれば、米国の未来が危ないと警告しているのだ。

 全米科学アカデミー(National Academy of SciencesNAS) によってまとめられた進化論に関する本『科学、進化論、天地創造説(Science, Evolution and Creationism)』の出版にあたって、ミシガン大学(University of Michigan)のGilbert Omenn教授は記者団に対し、「進化論が正しいとする理論は、喫煙が健康を害するものであったり、地球温暖化によってエネルギー政策が重要な問題であるとする理論と同等だ」と主張した。

■科学の授業で教えるべきことは?

 この本を編集した識者グループの1人であるOmenn教授は、「進化論の論拠を信じない大統領は、ほかの問題の論拠も信じようとしないのではないか。これは、米国が破滅に向かうことを示唆している」と将来の不安を語った。

 ハッカビー氏は、07年5月の討論会で進化論を信じていないと言明している。

 前年に行われた世論調査では、米国民の53%が人間は数100万年以上かけて変化して生まれたものだとする進化論を信じているという結果が出た。

 この本は、一般市民や教師を対象にしたもので、進化論の科学的解釈や進化論を科学の授業で教えることの重要性を容易な言葉で説明している。

■アイオワ州での勝利で政策転換か

 アイオワ州での勝利の後、ハッカビー氏はテレビのインタビューで、天地創造説を教室で教えるべきかどうかについては、「大統領が決める問題ではない」と述べ、反進化論の主張を和らげる姿勢をみせた。

 Omenn教授らは、天地創造説が科学の授業で教えられることには断固として反対の姿勢を示している。

 カリフォルニア大学(University of California)の生物科学者Francisco Ayala教授は、「占星術を天文学の代わりに教えたり、魔術を医学の代わりに教えたりすることはない」と述べ、「科学であるものとないものの違いを理解すべきで、天地創造説を進化論の代わりに教えてはいけない」と強調した。

 Omenn教授は、「深い信仰と進化論を信じることは同じ土俵で議論されるべきではない。科学の授業では宗教的考えを排除すべきだ」と訴えている。(c)AFP/Karin Zeitvogel