【11月23日 AFP】レバノン国会は23日、同日で任期が切れるエミール・ラフード(Emile Lahoud)大統領の後継となる新大統領を選出する予定になっている。しかし、親シリア派と反シリア派間の対立は依然として解消しておらず、選出に向けた協議は難航が予想される。

 国会は23日の午後1時(日本時間午後8時)に召集の予定で、現職のラフード大統領の任期は同日真夜中に満了となる。

 親大統領選出をめぐる混乱に備え、首都ベイルート(Beirut)では厳戒態勢が敷かれた。市内の主要な交差点には戦車や部隊が配備され、議会のある市中心部には市民の立ち入りが禁止された。学校は休校となり、混乱を恐れた市民は外出を控えていることから、街は普段より人通りが少ない。

 親欧米派の与党連合と、親シリアの野党イスラム教シーア派原理主義ヒズボラ(神の党、Hezbollah)連合が、統一候補の擁立で合意できなかった場合には、政治的空白や内戦(1975-1990年)時後期のように対立する2つの内閣が設立される懸念がある。

 23日中に新大統領が選出されなかった場合には、憲法62条によりラフード大統領は政府に大統領権限を委譲しなければならない。だが、同大統領は反シリア派のフアド・シニオラ(Fuad Siniora)首相が率いる内閣への権限委譲は拒否すると明言している。代替策として、ラフード大統領は暫定軍事政権の設立や非常事態宣言の可能性を示唆していた。

 シニオラ内閣とヒズボラの対立は、前年のイスラエルとの戦闘で市民の支持を集めたヒズボラが、閣内での発言力強化を求めて前年11月に閣僚5人が辞意を表明したことで表面化した。内戦以来最悪といわれる政局の混乱は、米国とイランおよびシリアとの政治的対立構図の延長線上にあるものとみれている。

 レバノンでは過去3年にわたって、反シリア派有力議員の暗殺が相次いだ。これらの暗殺事件では、シリア政府の関与が疑われている。

 2005年2月のラフィク・ハリリ(Rafiq Hariri)元首相の暗殺事件に関与したとして国際的な批判を浴びたシリアは、同年4月に29年ぶりにレバノンから軍隊を撤退させた。(c)AFP/Jocelyne Zablit