【6月12日 AFP】タクシン・シナワット(Thaksin Shinawatr)前首相の不正疑惑を調査する資産調査委員会(Assets Examination Committee)は11日、同前首相およびその一族が所有する資産を凍結することを明らかにした。総額で529億バーツ(約1965億円)に達するという。

 タクシン前首相は自らが創設した通信大手、シン・コーポレーション(Shin Corp)をシンガポールのTemasek Holdingsに売却したことで物議を醸した。2006年に軍部が政権を掌握した後、軍事政権が設立した同委員会は、この売却によって得られた利益が預けられている21の口座を差し押さえるとしている。

 同委員会の報道担当者Sak Korsaengruang氏は記者団に対し、同委員会はまた前首相夫妻が保有する不特定多数の個人口座についても凍結を指示したと語った。

 今回の決定はタクシン氏にとって新たな法的措置であり、打撃となった。約2週間前には、裁判所がタクシン氏らが結成したタイ愛国党(Thai Rak Thai)の解党を命じ、タクシン氏と110人の同党幹部らは5年間タイの政治にかかわることを禁じられた。

 この裁判所の判決を受け、軍事政権に対する抗議デモが毎日実施されており、11日にも新たなデモが行われると見られている。

 タクシン一族は2006年1月、税金の支払いを免れる方法でシン・コーポレーションを売却し、732億バーツ(約2744億円)の利益を取得したが、差し押さえられる21の口座には529億バーツしか残っていない。資産調査委員会のKaesan Athipho氏が記者団に明らかにした。

 同委員会はタクシン夫妻の個人口座の数、その口座に預けられた金額の予想についてはコメントを控えたが、国内すべての銀行に対し、同夫妻名義の口座を凍結するよう指示している。

 シン・コーポレーションに関する取引は国民の不満を招き、タクシン氏に対するデモ活動が数か月継続、最終的には2006年9月のクーデター発生に至った。(c)AFP