【5月24日 AFP】オーストリアを公式訪問中のロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は23日、米国が東欧で進めるミサイル防衛(MD)システム配備計画を強く批判した。

■ミサイル問題は議題にならず

 同国のハインツ・フィッシャー(Heinz Fischer)大統領と約1時間にわたり会談したプーチン大統領は、会談後の共同記者会見で、MDシステムは「新たな軍拡競争を招く、非生産的で有害な計画」だと警告した。だが、この問題は会談の議題にはならなかったことを認め、フィッシャー大統領とは夕食会で話す予定だと述べた。

 両首脳は、会談は全体として前向きなものだったと述べ、貿易、エネルギー分野で両国は良好な関係にあるとの見方で一致。プーチン大統領は、エネルギー、自動車分野を中心に、両国企業間で新たに計30件、総額30億ユーロ(約4900億円)相当の契約が締結されたことを明らかにした。

■コソボ問題では対立

 一方で、セルビアのコソボ(Kosovo)自治州の最終地位確定問題については、両者の見解ははっきり分かれた。

 オーストリアは、アルバニア系住民が大半を占めるコソボ自治州を国際社会の監督下におくことで事実上の独立を容認するマルッティ・アハティサーリ(Martti Ahtisaari)国連事務総長特使の提案を支持している。フィッシャー大統領は、国連安全保障理事会(UN Security Council)にコソボ独立決議案を提出した欧米諸国と、ロシアなど反対派の諸国がこの問題で対話をすることの重要性を指摘。

 しかしプーチン大統領は改めてコソボの独立反対を表明し、「コソボ自治州はセルビア共和国の領土の一部」という従来の主張を曲げなかった。

■人権問題では柔軟姿勢

 また前週、ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相がEU・ロシア首脳会議の場で指摘したロシアの人権抑圧問題について、プーチン大統領は「ロシア人は、こうした批判に耳を傾けねばならない」と柔軟姿勢を示した。この日の会談に先立ち、オーストリアのアルフレッド・グーゼンバウアー(Alfred Gusenbauer)首相はロシアの人権問題を議題にすることを予告していた。(c)AFP/Olga Nedbaeva