【3月5日 AFP】次期ローマ法王の体の寸法がいくつになるのかはまだ誰も知らない──そこで18世紀から歴代法王の衣装を仕立ててきた「ガンマレッリ(Gammarelli)」は、スモールサイズ、ミディアムサイズ、ラージサイズの祭服を用意して、次の法王の選出を待っている。

「白いウールの祭服、ストラ、赤いローファー、頭蓋帽、それに冬なので白いファーのボーダー付きの赤いベルベットのケープを、3着分用意した」と、ロレンツォ・ガンマレッリ(Lorenzo Gammarelli)氏は、ローマ(Rome)の店舗内でAFPの取材に語った。

■この仕事には特別な苦労がある。

「祭服の調整はいつもできるし、頭蓋帽は同じものを使う。やっかいなのはローファーだ。サイズの合わない靴を履くことはできないから、全サイズを用意するつもりだ」と、ガンマレッリ氏は語る。

 歴代法王の祭服を用意することは「ガンマレッリ」の専門職人たちが長らく続けてきたデリケートな仕事だ。パンテオン(Pantheon)に近いローマ中心街の小道に面した店内の壁には、祭服を提供した歴代法王たちの肖像画と「バチカン(ローマ法王庁、Vatican)御用達」の証明書が誇らしげに掲げられている。

「カソックの布はウール100%ですが、ローマ法王専用のウールというものはない。白い服を着たいという顧客の全員に使っている普通のもの同じ」と、ガンマレッリ氏は述べる。

 古い木製カウンターから、木製のはしごで店員が取り出してくる布ロールの山まで、店舗は、何十年も前から何一つ変わっていないかのように見える。そして、上りのらせん階段は店舗の最も神聖な場所につながっている──一般の人は立ち入りが禁じられた作業場だ。

 ガンマレッリ氏によると、法王用の新しい祭服の作業にあたっている職人の数は3~5人。2月11日にベネディクト16世(Benedict XVI)が突然の退位を表明してから、作業は記録的な速さで進められているという。

 バチカンには誰が祭服を届けるのか、また礼服の最後の仕上げは誰が行うのかと質問したが、ガンマレッリ氏からの返答は、謎めいた笑顔だけだった。

 だが確かなことは1つある──次期法王がバチカンのサンピエトロ広場(St Peter's Square)に集まった群衆と、全世界の中継視聴者の前に姿を表したとき、法王が身につけているものはつま先から頭まで、ガンマレッリ製だということだ。(c)AFP/Gildas LE ROUX