【3月25日 AFP】かつての規模の半分にまで縮小し、ここ数年苦境に立たされてきた米新聞業界だが、電子版の課金制や米経済全般の改善など、希望の光が少し見えているとする報告が発表された。

 米独立系世論調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)のメディア調査部門PEJ(Project for Excellence in Journalism)が18日に発表した「ニュースメディアの状況(State of the News Media)2013年版」によると、07年に深刻な不況が始まって以来、初めて新聞業界が楽観的になれる状況が出てきたという。

 例としては:

・米国の新聞1380紙のうち450紙が電子版の課金制を採用。ニューヨーク・タイムズ(New York Times)のような大手だけでなく中・小規模の新聞でも同様に機能し、新しい収入源になっている他、広告収入への依存軽減に貢献している。

・上場している新聞各社の株価が2012年は持ち直した。下落した価格からだが30%強上昇したものも見られた。

・売却先を求めていた新聞に買い手が現れている。例えば、新聞63紙をメディア・ジェネラル(Media General)から買収した資産家ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)氏の投資会社バークシャー・ハザウェイ(Berkshire Hathaway)など。

・わずかだが改善している経済の効果によって新聞界も緊張から解放され、自動車や不動産業界の広告出稿や、求人広告が復活しつつある。

■全般的には依然厳しい現況

 しかし、報告書の著者はこうしたプラスの要素は「当面、実績というよりも展望でしかなく」、基本的な指標は依然厳しいとの見方を示した。2012年の印刷版の新聞広告は6年連続で下落し、前年比で7.3%減となる15億ドル(約1420億円)の減少を記録した。

 国内からの出稿は特に弱く、多くの企業が他媒体に移行していることが読み取れる。今回の報告では新聞社の総広告収入の15%をデジタル広告が占めているが、過去2年間の伸びは低調で、印刷版の広告収入のマイナス分を補てんするほどには至っていない。

「大半の新聞社が業績上は利益をあげているが、その多くが負債の返済や、好景気だった時代の年金債務に苦しんでいる」と報告は指摘している。また業界の衰退の象徴として、都心の本社ビルを手離し、もっと狭く安いオフィスへ移転する例や、自社ビルに留まりながらも余ったスペースを他社に貸し出す例を挙げている。

■議論沸騰の「週3発行」、取材力の低下も問題に

 一方、一部の新聞は週3回に発行を減らし、業界内で議論を呼んでいる。大手13社幹部へのインタビューでは、多くの新聞が週3発行に移行するだろうとの予測が最も多かった。

 新聞社の人員削減も続いており、読者の期待に応える紙面作りが難しくなっている。報告では「新しいニュースの発掘や既報記事の追及および事実確認といった取材活動で、ニュース業界はさらに人手不足と対応能力の欠如に陥っている」と指摘している。別の世論調査では、回答者の31%が「ニュースや情報提供がなくなった」との理由から、慣れ親しんだ報道機関を見限ったとも答えている。

 PEJのエイミー・ミッチェル(Amy Mitchell)副所長は「(新聞以外の)他の発信が強力になっている一方で、新聞業界が掘り下げる取材力と世論の信用の両方を失ってしまう兆候は他にも色々ある」と警告している。

■グーグルなどIT依存強まるデジタルニュース

 デジタルニュースでは検索大手グーグル(Google)が大きな勢力として君臨しており、従来のメディアグループに影響を与えている。「読者を獲得するために必要なツールやプラットフォームをめぐり、報道機関はグーグルやその他一握りの強力なIT企業への依存をますます強めており、同時に、そうしたIT企業による変更にも振り回されやすくなっている。例えば携帯端末への移行によって報道機関は運営にかつてない出費を迫られたが、その出費を埋め合わせることのできる新たな収入源はいまだ生み出せていない」

(c)AFP/Rob Lever