【3月19日 Relaxnews】国際観光業界は徐々に気付きはじめている──中国の2倍、米国のそれよりも大きい新興旅行市場──裕福なイスラム教徒の行楽客の存在に。

 ドイツで3月上旬に開催された世界最大の旅行見本市「国際ツーリズム・マーケット展(Internationale Tourismus BoerseITB)」で、イスラム教徒の行楽客が観光に毎年1260億ドル(約12兆円)以上を費やし、さらにこの数字は伸び続けていることが紹介された。

 オーストラリアやニュージーランドなど、先見の明ある国々は、食事や宗教的なニーズに応えるイスラム教徒向けの特別観光旅行商品を立ち上げ、すでにこの需要に応じている。

 たとえばクイーンズランド州政府観光局(Queensland Tourism)は、イスラムの戒律で食べることを許される「ハラール食」を取り扱うレストランやモスクのリストを含む専用の旅行サイトを立ち上げている。昨年、このウェブサイトではゴールドコースト(Gold Coast)をイスラム教の断食月「ラマダン(Ramadan)」を過ごすのに快適な場所として紹介し、「今年はゴールドコーストで涼しいラマダンを過ごしませんか?」というキャッチフレーズを掲げた。

 ゴールドコースト・サーファーズパラダイス(Surfers Paradise)にあるマリオットコートヤード(Marriott Courtyard)ではラマダンの期間中、イスラム教徒の旅行客が断食の中断時にデーツ、軽食、コーヒーを楽しむことのできる「ラマダンラウンジ」も設けられた──こういった努力が報われ、一人当たり平均7000ドル(約67万円)を消費するイスラム教徒の観光客が約38%増加したとITBで報告された。

 ニュージーランドの観光局も昨年、ベジタリアンやビーガン、ハラール認定の料理などを提供するハラールレストランやカフェを紹介した食べ歩きガイドを作成し、旅行代理店やニュージーランド大使館で配布した。

 食事に加え、イスラム教徒の旅行者には、礼拝場所と礼拝用の敷物、ラマダン期間中の夜明け前の朝食サービス、女性限定の区画を備えた家族にやさしく、アルコールを提供しないホテルなど、多岐にわたる要望に応じる必要がある。

 一方、イスラム教徒の旅行コンサルティンググループ、クレセントレーティング(Crescentrating)は昨年、マレーシアを世界で最もイスラム教徒に優しい旅行先と発表した。安全性、イスラム教徒中心のホテル・アメニティー、ハラール料理と礼拝施設が利用可能かどうかなどに基づいて選定された。例えば、マレーシアでは空港やショッピングモール、その他の公共施設に礼拝室が備わっているのは珍しくないという。(c)Relaxnews/AFPBB News