【1月16日 AFP】かつては若者たちの騒々しいたまり場だったゲームセンターが、別の世代が暇をつぶす流行の娯楽場として、急速に変貌しつつある。その世代とは、おじいちゃんやおばあちゃんたちのシニア世代だ。

 最近のゲームセンターでは、時間もお金も有り余っていて、メダルゲームマシンの前で数時間を過ごす行儀のよいシニア世代の数が、急増しているのだ。

 少子化により高齢化の加速が予測される日本で、各業界は高齢者をターゲットとした「シルバー市場」に比重を移している。

 従来の老人向けの生活に満足できないシニア世代にとっても、ゲームセンターは新たな娯楽を提供し交流をはぐくむ場となっている。

 ゲームセンターでシニア世代が熱中するゲームは、敏しょう性が要求されるシューティングゲームや格闘ゲームなど、孫世代が興じるゲームではなく、スロットマシンのような「コイン」を投入して遊ぶメダルゲームだ。

 東京・木場(Kiba)で、7年前にタクシー会社を退職してからゲームセンターに通うようになったという68歳の男性は、「前は家にいて、テレビばかり見ていた。そのままだとボケちゃうから、外に出ようと思った」ことがきっかけだったと語る。今では3~4時間をゲームセンターで過ごし、たまったコインを使って遊んでいる。数か月で使った額は最高で約2万円ほどだ。

   「コインがたまって、孫が遊びに来ると見せてやると、子供は喜ぶから。袋に入ったのを、ドサッと見せてやる。孫がよろこぶね。(ゲームをすると)孫との意思の疎通があるから」

■増えるシニア世代の利用客

 5000億円市場といわれるゲームセンター市場で、シニア世代が占める割合の公式統計はまだなく、依然としてゲームセンターの主要顧客層は10代の若者や子どもたちだ。だが、ゲーム業界関係者らは皆、シニア世代の数は5年ほど前から確実に増えていると指摘する。

 実際、ゲームセンターはショッピングモールなどシニア世代が日常的に立ち寄りやすい立地にあるという利点がある。ゲームセンター側も、子どもたちが学校にいる平日の昼間にシニア世代の利用を促そうと積極的な動きがみられる。

 30年前に世界的に人気を博したゲーム「パックマン(Pac-Man)」を生み出したナムコ(Namco)の広報担当、高野雄二(Yuji Takano)氏は、80年代にテレビゲームの登場で、ゲームに対する違和感がない人が増えたことを指摘。幅広い顧客に対応できるよう、ゲームセンター内にポップな装飾を施したり、動きやすいようスペースを広くとるなど、明るい雰囲気作りを心がけているという。

 堅い座席では長時間ゲーム機の前で過ごすのが厳しい客のために、座り心地の良いいすを揃えたり、店内を巡回し高齢者に親しみをこめて声がけするよう従業員に奨励しているゲームセンターもある。

 ゲームメーカー側も、シニア世代がゲームで遊ぶことの利点を強調する。

   「手先をつかったり、時には考えたりするから、健康というか、老化防止には良いのかなという人もいる」と、セガ(SEGA)広報の田中宏幸(Hiroyuki Tanaka)氏。会社としてもシニア世代向けの施策を検討中だという。

 さらにゲームセンターは、高齢者の出会いの場ともなっている。

 週に2~3回はゲームセンターに通うという63歳の女性は、「ここなら、別の町から来ている人ばかりなので、余計なことを気にせず悩みなどを打ち明けられる。近所で余計な事をしゃべると、何を言われるかわからないから」と話す。

   「ゲームをやっている間は集中していて、何も考えないで、ストレスは全く無いの。テニスとかやっていたこともあるけれど。テニスは相手を誘うにしても、時間を合わせて、コートを取って。束縛されて、面倒くさい。ゲームは単独でやれるからいい、好きな時にやればいいし」と語り、来れば会話も楽しめるとゲームセンターの効用を語った。(c)AFP/Hiroshi Hiyama