【2月7日 AFP】世界的な金融危機は世界中の美術市場にも影響を与えた。中国現代アートの売れっ子たちの作品の超高額な値段にも影響が出るのは必至だ。

 10年ほど前から黄金時代を謳歌(おうか)してきた中国現代アート、キラ星のごとく表舞台に登場してきた有名アーティストたちの間には現在、やや暗いムードが漂っている。しかし一部には「これでよかったのだ」との声も聞かれる。

 北京(Beijing)の「798芸術区」で文化イベントを手がける団体「Thinking Hands」のディレクター、Berenice Angremy氏は「(中国現代アートは)適切な価格水準に是正されていくだろう」と予想する。

 香港(Hong Kong)では、オークションハウスのクリスティーズ(Christie's)やサザビーズ(Sotheby's)の落札価格が拍子抜けするほどの低い水準となっており、中国国内では画廊の閉鎖が後を絶たない。これらはバブル崩壊の予兆だろうか?

 サザビーズ幹部のEvelyn Liu氏は「中国現代アート市場はこの5年間で過去に例のない急成長を遂げた。2004年に300万ドル(約2億7000万円)だった落札総額は、2007年には1億9400万ドル(約178億円)に達した。だから、価格が少し落ち着いてきたとしても、別に驚くにはあたらない」と話す。

 北京の「Poly Auction」も、金融危機の影響を肌で感じており、作品の価格を調整せざるをえなくなっている。だが、平均価格は下がってはいるものの、一流アーティストの一級品はいまだに高額でも売れているという。

 例えば、前年12月初旬に巨匠・曾梵志(Zeng Fanzhi)の作品を出品したところ、90万ドル(約8000万円)で落札された。だが、そもそも曾梵志の「仮面シリーズ 1996 No.6(Mask Series 1996 No.6)」は前年5月、香港のクリスティーズで、中国現代アート史上最高額の970万ドル(約8億9000万円)で落札されている。その1か月後、香港のサザビーズでは、劉小東(Liu Xiaodong)の作品が795万ドル(約7億2000万円)で落札された。

■玉石混交の中国現代アート

 美術に詳しい専門家らは、中国現代アートブームにより、多くのアーティストたちが、使い古された文化大革命のイメージや今では珍しくもなくなったポップアートのモチーフを使って、商業価値を打ち立てようと努力しているという。

 香港のある画廊関係者は「模倣したものも多く見受けられるし、欧米では30-40年も前にすでに時代遅れになっているアバンギャルドアートのようなものも、出回っている」と厳しい意見だ。

 798芸術区の画廊のマネージャーは「値段はバカみたいに高い。若いアーティストが、学校在学中から自分の作品を10万ドル(約900万円)で売るんだよ。いかれてるよね。金融危機はこういうことを正してくれるいい機会だよ」とぼやく。

 先のAngremy氏は、これまでの異常なブームについて次のように分析した。「中国現代アートには本物のすぐれたアーティストもいるが、過大評価や投機目的といった要素も多分に含まれていた。アーティストや画廊が値崩れを防ぐために自分たちの作品を買っているとの憶測もある。こうした慣行が中国特有のものではないにしても、海外以上に国内で今後広がっていくかもしれない」(c)AFP/Joelle Garrus