【3月29日 AFP】第2次世界大戦中の沖縄戦で、旧日本軍指揮官が住民らに対し集団自決を命じたとの記述がある、ノーベル賞(Nobel Prize)作家・大江健三郎(Kenzaburo Oe)さんの「沖縄ノート(Okinawa Notes)」(1970)をめぐり、当時の沖縄守備隊長(91)らが名誉が傷つけられたとして、大江さんと出版元の岩波書店(Iwanami Shoten)に出版差し止めなどを求めた訴訟で、大阪地裁(Osaka District Court)は28日、請求を棄却した。

 判決理由で深見敏正(Toshimasa Fukami)裁判長は「集団自決に軍が深く関与したのは認められる」と指摘。さらに、多数の住民が旧日本軍兵士が自決のための手りゅう弾を配ったと証言していることや軍が駐屯していない場所では自決はなかったことなどから、「沖縄ノート」の記述には「信じるに足る相当の理由があった」とした。

 原告側の元守備隊長ともう1人の元守備隊長(故人)の家族は、集団自決を命令したことはなく、住民たちによる自発的なものだと主張し、大江氏と岩波書店に2000万円の損害賠償と出版差し止めを求めていた。

 原告側は、判決を不服として控訴する方針を明らかにした。(c)AFP/Miwa Suzuki